Special Issue
週刊BCN 特別連載企画<第12回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/10/03 09:00
週刊BCN 2024年09月30日vol.2031掲載
福島エリア
葉物野菜のスマートファクトリーが稼働 国の復興プロジェクトによる連携も
拠点エリア 東北エリア拠点データ 郡山支店
住所:福島県郡山市堂前町6-7(郡山フコク生命ビル3F)
電話番号:024-939-5525
福島県は、東北の中で最も南部に位置にし、全国の都道府県で3番目に広い面積を持っています。県内は、鶴ヶ城や大内宿のように歴史的な景観と街並みが残る会津、福島市や郡山市といった人口や産業が集積する中通り、太平洋側の浜通りと三つのエリアで構成され、エリアごとに多様性があります。2011年の東日本大震災では、浜通りエリアが大きな被害を受けました。現在、復興に向けた歩みは着実に進んでおり、再生可能エネルギーの導入や防災対策の強化によって地域経済の活性化を図っています。
産業の中心は製造業で、特に中通りは機械、電子、自動車関連の工場が集積し、全国的にも重要な生産拠点となっています。また、桃などのフルーツをはじめとした農業も重要な産業の一つです。農業に関しては、東日本大震災後、浜通りで労働力不足と農地の荒廃が大きな課題になりました。これに対応するため、南相馬市で農業用の自動走行トラクターの実証実験が行われました。
農業にIT技術を掛け合わせ、生産の自動化を進める動きもあります。田村市の企業は、自動搬送システムや最新のロボットを含めた自動化設備を備え、葉物野菜を生産するスマートファクトリーを稼働しています。また東日本大震災関連では、浜通りの復興に向けた国のプロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」で福島ロボットテストフィールドが整備され、企業や研究機関が連携して新たな産業を生み出しています。
東北で2番目に人口が多い福島県ですが、最近は減少傾向が続いています。県内の企業は、人口減少による人手不足を何とかしようと、生成AIを業務に取り入れることにとても関心が高いです。地域経済にも人口減少に伴う大きな影響が予想されるため、あらゆる産業・企業にとって技術革新による生産性向上は喫緊の課題です。福島県が主体的に取り組んでいるスマートシティーの推進も含め、DXによる新たなサービスの創出が地域の競争力強化につながるのではないかと感じています。
千葉エリア
スマート農業などの取り組みが進む DCの建設先として世界から注目
拠点エリア 関東エリア拠点データ 千葉支店
住所:千葉県千葉市美浜区中瀬1-3(幕張テクノガーデンD棟11F)
電話番号:043-274-7341
千葉県は、海外からの玄関口となる成田空港や集客数日本一のテーマパーク、大規模イベントが開催できる会場など、多くの人が集まる施設があることで有名です。こうした都市的な面に加え、三方を海に面する県南部をはじめ、県内には豊かな自然や観光地も多く、多様性に富んでいるのが特徴です。
産業も特色があり、農業・漁業・工業・商業がバランスよく存在しています。例えば、東京湾沿岸部で都市化・工業化が進んでいます。また、酪農発祥の地とされている嶺岡牧や、日本三大漁港の一つである銚子漁港もあり、地勢を生かした近郊農業・漁業が発達しており、農業産出額と漁業総生産量は全国有数の規模となっています。日本三大貿易港である千葉港を有していることから貿易も盛んです。
千葉県では、ほかの地域と同じように農業従事者の減少や高齢化が問題になっています。自治体は生産性向上などを目的としたスマート農業を推進し、作業を自動化するための機械の導入支援や実証試験などを後押ししています。加えて「千葉県デジタルトランスフォーメーション推進戦略」を策定。企業や大学と協力しながら暮らしや行政などの面でもDXを目指しており、行政手続きのオンライン化や県庁の業務効率化、AIを活用した災害対策強化などに取り組んでいます。
また、印西市では、世界的なIT企業がデータセンター(DC)を建設しており、地元では「データセンター銀座」と呼ばれています。地盤が固いことやアクセスの良さ、県南部に海底ケーブルの引き込み口があることなどが建設先として選ばれる理由となっています。
近年、県内では人口が減少傾向にある地域が多く、人手不足が課題となっています。東京都近郊の都市部ではIT化が進んでいる一方で、都市部から離れた地域の動きは鈍く、地域間の格差が生まれているのが現状です。スマート農業やスマート漁業など、地域特有の事例が生まれ、それが広がることによって県全体が盛り上がることを期待しています。
沖縄エリア
リゾート地の特性を生かす 自治体は後押しに注力
拠点エリア 九州エリア拠点データ 沖縄支店
住所:沖縄県那覇市前島3-1-15(大同生命那覇ビル7F)
電話番号:098-860-0530
日本の南西に位置する沖縄県は、観光地として非常に有名です。本島のほか、宮古島や石垣島などの離島があり、美しい海を中心とした豊かな自然は多くの人を引きつけています。気候の違いに加え、2000年に世界遺産に登録された「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」などから本土と違った雰囲気を味わえるのも魅力と言えます。
沖縄県の産業は、観光などの第3次産業の割合が高いのが特徴です。最近は、ホテルやテーマパークなどの開発が進んでおり、建設をはじめとした関連産業が堅調に推移。県内経済はコロナ禍に打撃を受けましたが、24年は回復基調が拡大するとみられています。
IT活用の状況では、電力会社や金融機関といった大きな組織は、クラウドサービスを利用するなど比較的積極的と言えます。ほかにも飲食業や宿泊業などで先進的な事例が生まれつつありますが、小規模な企業が圧倒的に多い実情を踏まえると、沖縄県全体がDXに向けて本格的に動き出すのはこれからとみています。
DXの推進に向けて、自治体は後押しに注力しています。沖縄県は、リゾート地である地域特性を生かし、各産業にテクノロジーを掛け合わせて付加価値の向上を目指す「リゾテック」による産業振興や、企業誘致などを進めてきました。24年2月にはDX推進計画を策定し、今後は生活、産業、行政の各分野で施策を展開する方針です。
沖縄県では、那覇市を中心とした本島南部と北部の格差や、離島の過疎化などが課題となっています。沖縄県の人口はこれまで増え続けてきましたが、将来的に減少に転じるのは確実とされており、既存の課題がさらに深刻になる可能性があります。こうした状況を打破するためには、ITによって業務の生産性を向上させたり、イノベーションを創出したりすることが必要です。自治体や企業などがしっかりと連携し、大きな発展につながることを期待しています。
- 1
関連記事
週刊BCN 特別連載企画<第11回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
週刊BCN 特別連載企画<第10回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
週刊BCN 特別連載企画<第9回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
週刊BCN 特別連載企画<第8回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
週刊BCN 特別連載企画<第7回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は