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週刊BCN 特別連載企画<第7回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/05/02 09:00
週刊BCN 2024年04月29日vol.2012掲載
宮城エリア
文教、行政が率先の姿勢 民間はAIへの関心高まる
拠点エリア 東北エリア拠点データ 仙台支店
住所:宮城県仙台市青葉区一番町4-6-1(仙台第一生命タワービルディング6F)
電話番号:022-212-6450
宮城県は東北地方の中心として発展を続けている地域です。東には太平洋が広がり、日本三景にも選ばれている松島などの美しい海岸線と豊かな漁場に恵まれています。西には奥羽山脈が連なり、蔵王連峰や船形山、栗駒山といった山々がそびえます。経済面では、全国の大企業が置く支店や子会社などによる「支店経済」が支え、自動車産業のほか、電子部品やデバイスの生産も盛んです。加えて、自然資源を生かした農林水産業や食品産業も地域経済の柱となっています。
企業におけるIT活用については、支店を除けば、中小企業が多い土地柄や東京から近いといえども地方都市であることから、まだまだこれからという印象です。ただ、AIに関しては最近広く話題となっていることもあり、興味が深まっているようです。
先進的な利用が目立つのは文教分野です。例えば仙台市では「STEAM Lab実証研究」として、モデル校の小・中学校で最新技術を活用した創造性の養成に取り組んでいます。また、東北大学サイバーサイエンスセンターでは、ベクトル型のスーパーコンピューター「AOBA」を運用。2023年8月には大規模な増強を実施し、ベクトル型としては世界一の性能を達成しました。データサイエンス、AIへの応用が期待されるほか、地震などの緊急時には防災・減災のために活用できる機能も備えているそうです。
行政も率先してデジタル技術の導入に努めてい拠点データます。宮城県は20年9月に都道府県として全国で初めて「デジタルファースト宣言」を表明しました。手続きのオンライン化などによる県民サービスの向上、ITを生かした県内産業の活性化、働き方改革の推進を目指しています。
先行する文教、行政分野の姿勢が民間にも波及することで、エリア全体のIT利用がさらに活性化することを願っています。
福井エリア
北陸新幹線の延伸で注目集まる 自治体の意欲は旺盛
拠点エリア 中部エリア拠点データ 福井支店
住所:福井県福井市中央3-1-5(三谷中央ビル9F)
電話番号:0776-28-0955
福井県は中部地方の沿岸部に位置しており、中央にある木ノ芽峠を境にして、嶺北地域と嶺南地域に分かれています。嶺北地域には川や山のほか、福井平野があります。一方、嶺南地域はリアス式海岸が特徴の若狭湾を中心に、自然豊かで住みやすい地域です。
観光名所として有名な東尋坊があるのに加え、2023年夏にリニューアルオープンした福井県立恐竜博物館も人気があるなど、観光業が盛んです。このほか、繊維やめがねなどの産業が活発です。
県内でIT化の動きが見られる業種としては、大手製造業や観光業、自治体が挙げられます。観光業では、観光客誘致の側面から無線LANの整備に取り組むと聞いています。
自治体に関しては、福井県が、県庁や民間企業のDXを推進する動きがあります。福井県の人口は減ってきているのが現状で、将来的に起こり得る人手不足の解消において、DXが重要なかぎになると見ているのではないでしょうか。県庁では、業務効率化を目指し、24年4月10日から全庁で米Microsoft(マイクロソフト)の生成AI機能「Windows Copilot」を本格導入しているそうです。
民間企業に対する施策としては、「ふくいDX加速化補助金」として県内の中小企業のDXを支援するための補助金を出しているほか、県内の中小企業のDXの拠点として、専門家への無料相談受付や勉強会・セミナーの開催、県内企業のDX事例の共有などの支援策を展開する「ふくいDXオープンラボ」を設置しています。
福井県は、北陸の他県の前例を大事にされている企業が多く、IT化には慎重な印象があります。しかし、自治体のIT化に対する意欲は旺盛で、伸びしろがある市場ともいえます。事例づくりを進めることで企業のIT化を促すのも一つの手だと考えています。北陸新幹線の延伸によって間違いなく注目されている地域ですので、ITを通じてより大きな盛り上がりを見せてほしいです。
長崎エリア
西洋医学発祥地として医療で積極的 街は「100年に一度の変革期」
拠点エリア 九州エリア拠点データ 長崎支店
住所:長崎県長崎市出島町1-14(出島朝日生命青木ビル2F)
電話番号:095-829-0266
長崎県は今、「100年に一度の変革期」を迎えているといわれています。特に長崎市では、2022年の西九州新幹線の開業に合わせて駅前などで再開発が進み、街が大きく変わる様子が見られます。県内でのIT活用では、特に医療領域が積極的で、西洋医学発祥の地として非常に意識が高いと感じています。
長崎市では、21年にイベント施設「出島メッセ長崎」が開業するなど、多くの再開発プロジェクトが動いています。24年は、Jリーグの試合が開催可能な大型複合施設「長崎スタジアムシティ」のオープンを10月に控えており、新たな活気の創出が見込まれています。
IT活用に関しては、県内の病院などをつなぎ、診療情報を共有する「あじさいネット」が有名です。全国に先駆けて04年にスタートし、ほぼ県内全域をカバーする国内最大規模のネットワークになっています。また、海岸線が長く、離島の数が全国で最も多い地理的課題を解決するため、ローカル5Gを使った遠隔医療システムが4月に稼働しました。
ほかにも、ドローンを活用した離島での配送など、地域の特性に合わせたIT活用の事例があります。まだDXの前段階のデジタル化に取り組む企業が多い状況ですが、ITに対する意欲は比較的高いといえます。自治体も前向きな姿勢で、例えば長崎県は、21~25年を期間とする「ながさきSociety5.0推進プラン」を策定し、AI、IoT、ビッグデータなどの活用を目指しています。
長崎県は、江戸時代の鎖国下で唯一、海外との交流がありました。国際色豊かな文化は大きな強みで、国内外から多くの人が観光に訪れています。しかし、ほかの地域と同様に、若年層の県外流出による担い手不足は大きな課題になっています。街のハード整備は着実に進んでおり、今後はいかに魅力を発信するかがポイントになります。チャンスを逃さぬよう地域が一体となって取り組み、大きな飛躍につながることを期待しています。
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