Special Issue

創業100周年を迎えた日本事務器 これまでの挑戦と100年間変わらないものとは

2024/02/08 09:00

週刊BCN 2024年02月05日vol.2001掲載

 1924年の創業以来、計算機やタイプライターなどの販売からスタートし、現在はSIerへ変貌を遂げている日本事務器。「Change to Change」の精神で顧客へ最適なITの提供や社会貢献を続けてきた同社は、2024年2月1日に創業100周年の節目を迎えた。それに合わせて田中啓一代表取締役社長への特別インタビューを実施。伝統ある企業の歩みを振り返るとともに、次の10年、20年に向けた戦略やビジョンなどについて話を聞いた。

扱う製品は変化しても思いは変わらなかった100年間

──まずは、日本事務器様のこれまでの歩みをお聞かせください。

田中 当社は1924年に日本事務器商会として創業して以来、計算機やタイプライター、そして国産コンピューター「NEAC」など、さまざまな製品の販売やサポートを行ってきました。今日まで「経営とICTの最適な関係」を探りながら、全国各地のあらゆる業種・業態のお客様に多彩なソリューションを提供しています。
 
田中啓一 代表取締役社長

 現在では、1万3000件を超えるお客様のIT化をお手伝いさせていただいていますが、その中で培われた豊富な知見や技術、ノウハウを業界別にモジュール化し、これらをお客様のご要望に応じて組み合わせることで、「必要な機能を」「必要な時に」提供するフレキシブルな体制を整えています。また、ICTはお客様が使いこなせてはじめて真価を発揮すると考え、ユーザビリティへの配慮や教育、システム稼働後の普及・定着をはじめとする運用支援にも注力しています。

 100年の歴史のなかで取り扱う製品やサービスは移り変わってきましたが、「お客様の経営課題や業務をテクノロジーで支えて社会に貢献する」というわれわれの思いは変わりません。

──日本事務器のビジネスモデルの特徴や強みは何でしょうか。

田中 お客様のビジネスを支援するために、その時代ごとに利用可能なツールやサービスを提供してきたことが当社の強みだと自負しています。通常のビジネスモデルでは、お客様からの注文を受けて納入すると売り上げが立ち、それを年間で評価します。もちろん当社もそこは変わりませんが、それに加えて、われわれはお客様がツールやサービスを使い始めてからの「導入価値」により重きを置いています。例えば、昔のコンピューターはよく故障したので、そのサポートが価値につながっていました。現在はクラウド化の流れがあり、オフィスにコンピューターが存在しないことも珍しくないということもあり、サポートの価値が変わってきていると思います。そのため、時代のニーズに合わせて新たな価値をどう届けるかを模索している最中です。

 今は生成AIやIoTなど新しいテクノロジーが次々と登場していますが、それらを活用することでどのような効果が生まれるかは、実際に使ってみないとわかりません。だからこそ、まずはわれわれ自身が、もしくはお客様と一緒に、新しいテクノロジーを試してみることを重視しています。お客様の経営課題の改善や業務効率の向上に貢献できるように「Change to Change(常に変化に対応できる体質でいよう)」をテーマとして掲げて今日まで励んできました。

──そうした理念の下で、どのような体系で事業を推進しているのでしょうか。

田中 現在は大きく「既存領域事業」「成長領域事業」「創造領域事業」の三つの領域で事業を展開しています。既存領域での事業を維持しつつ、その周辺事業となる成長領域事業、例えば、各業界ごとのDXや、新しい顧客サービス機能などに取り組みを進めています。

 創造領域は、取り組んだからといって必ず成功するとは限らないチャレンジの領域であるため、いろいろと試してみることを重視しています。現在積極的に取り組んでいることをいくつかご紹介すると、例えば漁師の方々が情報共有できる環境の整備があります。これが実現すれば、集魚地域の確認や赤潮の事前検知などが可能になります。

 そのほかにヘルスケアの分野でも、助産師の方々にスマートフォンを携帯してもらい、妊産婦に関する情報をアプリで提供する試みに挑戦中です。いずれの試みも、まずは念入りにヒアリングを行い、現場のニーズをくみ取ることからスタートしています。

顧客への価値を生み出す 透明でオープンな社内環境

──人材育成における田中社長の理念をお聞かせください。

田中 当社には、お客様のニーズを聞き出す人もいれば、そうしたニーズに基づいてシステムをデザインする人、そのシステムをセットアップする人、より効果的なシステムの利用方法を提案する人など、さまざまな人材が在籍しています。しかし近年、お客様から求められる役割が変わりつつあると感じており、当社の人材に必要となる技術や能力、役割について整理し直しているところです。こうした人材育成についても「Change to Change」が欠かせないと言えるでしょう。

──会社経営における田中社長のモットーは何でしょうか。

田中 会社内部としては、社員がアイデアを発しやすい、役員も社員からアイデアを聞き出しやすい、透明でオープンな環境となるように心がけています。そのために、世間に先んじて社内SNSを運用したり、オフィスのデザインも工夫したりして、社員間の活発な意思疎通を促しています。そこで大切なのは何と言っても好奇心です。「何にでも好奇心を持って接する」姿勢は、自分自身にも、そして社員にも奨励しており、文化として社内に根付いています。当社のミッションは、XRやAIなど、新たなツールをまずはわれわれ自身が使ってみて、そこからお客様に体験していただき、さらにお客様に「これならこんなことができるのでは」とひらめいていただくことです。だからこそ、そのための環境づくりが経営においても最重要テーマだと考えています。

社員とAIの「タッグ」で相乗効果を目指す

──100周年を迎えた今、次の10年後や20年後をどう見据えているかビジョンをお聞かせください。

田中 「ChatGPT」に代表される生成AIがビジネスを取り巻く環境をガラッと変えるでしょう。そうした時代にあって、AIを上手に活用したシステムをお客様に提供していきたいですね。そのためには、われわれ自身もAIを効果的に利用して仕事を変えていく必要があるでしょう。また、お客様がAIを用いた新たなビジネスを展開するためのお手伝いもしていきたいと考えています。つまり、AIを用いたシステムの提供、われわれ自身のAI活用、お客様のAI活用ビジネスのサポート、という三つのアプローチを通じて新たな価値を提供できるようにすることが当面の目標です。ITシステムの世界はローコードやノーコードが一般的になりつつあり、そこでのわれわれの価値も、以前とは大きく変わってくると思います。

 AIは単なるツールではなく、仕事を遂行するうえでの「相棒」であると位置づけています。なので、社員一人一人に専用のAIを提供して、AIとタッグを組んでもらい、その相乗効果で100倍の力を発揮できるように、現在、試行錯誤を重ねているところです。そうなれば、より多くの価値をお客様に提供できるようになります。

 売上高や営業利益といった経営指標での評価だけでなく、SDGsをはじめとした社会貢献活動にも、社員とともに積極的に取り組みを進めています。当社は創業以来、変わることなく、お客様のためを思いながらシステムをつくってきました。それはこれからも変わりません。

Change to Changeの精神で目指す 新たな価値の提供
創業100周年プロジェクトへの思い

 日本事務器は、創業100周年にあたり「100 Years of Being Closer」をコンセプトとする記念事業を展開します。この事業では、わが社を取り巻く全てのステークホルダーの皆様へ感謝の気持ちを表明するとともに、100年の歴史を広く伝えることを目指しています。

 具体的には、ステークホルダー別感謝施策の実施、社会貢献活動、100周年史の制作を行っていきます。100周年史の制作については、創業から現在に至るまでの歴史がわかるデジタルブックを作成して公開する予定です。合わせて、社内向けコンテンツとして別冊「歴史を学ぶマガジン」も作成します。これは、当社の歴史を知らない若手社員をメインターゲットとして、重要なエピソードをマンガ化し、解説とクイズを交えてコンテンツ化したものです。

 このほど創業100周年記念ウェブサイトも公開しました。創業から変わらず大切にしてきた、お客様のそばでシステムをつくりつづけてきた「つながり=Connected」がウェブサイトのテーマとなっています。
 
 
 合わせて100周年記念ロゴマークも公表しています。このロゴマークは、日本事務器を表すブルーと、お客様との心が通った関係性を表す温かなオレンジと黄色で構成しています。そして、2本の線の重なりで日本事務器がお客様のそばで関わる、つながりを表現しています。
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外部リンク

日本事務器=https://www.njc.co.jp/