Special Issue

<米クラウディアン 対談 ネットワールド>マルチクラウド時代のデータ保管に「CLOUDIAN HyperStore」 Amazon S3互換オブジェクトストレージでパブリッククラウド連携

2019/12/19 09:00

週刊BCN 2019年12月16日vol.1805掲載


 マルチクラウド化の進行と、データ容量の爆発的な増加。この二つの課題をうまく解決するために、パブリッククラウドとプライベート/オンプレミスを連携させようとする企業が増えている。そのためのストレージとして注目が集まるのが、第3のプラットフォームとも呼ばれる「オブジェクトストレージ」。ネットワールドは、CLOUDIAN HyperStoreのディストリビューターとして、この製品を中堅企業やスタートアップ企業にも広めていく。

マルチクラウド時代の容量要求に
オブジェクトストレージが応える

 「今、世界のストレージ市場では、ハイブリッドクラウドとマルチクラウドが大きく伸びている」。米クラウディアンのマイケル・ツォCEOは、ストレージを取り巻く現在の状況をこう説明する。IT基盤の全てが一つの巨大なメガクラウドに集約されるだろうという観測もかつてあったが、現実にはメニークラウド(多数のクラウド)が優勢になりつつあるというのだ。例えば、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などのパブリッククラウドを使い分けつつ、プライベートクラウドと組み合わせてハイブリッドで運用する、といった形態である。
 
米クラウディアン
マイケル・ツォCEO

 これと並行して、企業が取り扱うデータの容量も爆発的に増加している、とツォCEOは指摘する。アナリティクスで有用な知見を得るには大量のデータが欠かせないし、機械学習(ML)や深層学習(DL)などのAIにも膨大なデータが必要になるからだ。

 そこで、今、オブジェクトストレージを中心とした「第3のプラットフォーム」に注目が集まっている。DAS中心の「第1のプラットフォーム」やSAN/NAS中心の「第2のプラットフォーム」と違って、オブジェクトストレージはデータをオブジェクト単位で取り扱う。階層やディレクトリーがなく、データとメタデータだけで表現する方式なので、格納場所に依存することなく拡張や移動ができるという特徴がある。

 オブジェクトストレージの実装例は、クラウドサービスのAmazon Simple Storage Service(Amazon S3)が最もよく知られている。また、オンプレミスで使えるオブジェクトストレージ製品も次々と登場中。ネットワールドの森田晶一社長は「かつては使いづらいという印象もあったが、改良が進んだ現在では、あらゆる用途に使える普通のストレージとなりつつある」と語る。
 
ネットワールド
森田晶一社長

Amazon S3互換のAPIを装備して
外部クラウドともスムーズに連携

 このような背景のもと、クラウディアンはアプライアンス型のオブジェクトストレージ「CLOUDIAN HyperStore」を2018年1月から日本国内で販売している。現在提供されているのは、HyperStore Xtreme(4U高、最大実効容量1.5PB)、HyperStore 4000(4U高、最大実効容量800TB)とHyperStore 1500(1U高、同144TB)の3シリーズ。最小構成は3台だ。

 HyperStoreの最大の特徴は、APIがAmazon S3と完全互換になっているという点にある。「Amazon S3プロトコルに準拠することも決して簡単ではないが、さらに難しかったのは複数のオブジェクトストレージをスムーズに連携してスケールさせることだった」とツォCEO。パブリッククラウドや他のデータセンターにデータが分散格納されている場合でも、相手がAmazon S3互換のオブジェクトストレージであれば、HyperStoreとつなぐことによって、全体を一つの超大型ストレージとして扱うことができると説明する。

 従って、Amazon S3対応のアプリケーションであれば、無修正でHyperStoreへのアクセスが可能になる。データの容量が社内で急激に増えたときも、パブリッククラウドや外部データセンターを利用してオブジェクトストレージの容量を拡張できるわけだ。また、他のAmazon S3互換オブジェクトストレージとの間でデータを複製したり移動したりするのも容易。バックアップ/リストアや災害復旧(DR)のための仕組みとしても活躍する。

 このほか、HyperStoreには、「システム無停止での容量拡張(容量などの仕様を各ノードで統一不要)」「ノード追加によるパフォーマンス向上(シェアードナッシング方式で複数の要求を並列処理)」「データを確実に保管(複数レベルのデータ複製とイレージャーコーディング)」「セキュリティ(AES-256方式のサーバーサイド暗号化とAmazon S3互換のアクセス制御リスト)」「自動階層化(ポリシーに基づいてAmazon S3やGlacier、GCP Coldline、Microsoft Azure BLOB Storageなどとの間でデータを自動転送)」「マルチテナント運用(QoS制御と課金機能付き)」「メタデータを自動的にElasticsearchに登録して検索性を高める機能」「使いやすい管理画面(GUI操作のCLOUDIAN Management Console)」などの機能も備わっている。

すでに世界400以上の企業が採用
多様な業種で実務に使われている

 実は、HyperStoreは日本で生まれたオブジェクトストレージ製品でもある。「原型は、日本のある通信企業向けに当社が開発したモバイルメッセージング用の製品。11年から3年間は、その企業の求めに応じて、先進的でハイスペックな機能を開発・実装することに努めた」とツォCEOは語る。ワールドワイドでの導入企業数は、すでに400以上。その中には、世界的な企業ランキングに載っている企業も数多く含まれている。

 汎用的なオブジェクトストレージであるHyperStoreは、毎日さまざまな業種で使われている。

 例えば、出発点となった通信/xSPの世界では、各種のサービスで使う膨大なデータを格納するための基盤としてHyperStoreを活用。欧州のあるxSPは、7カ国・13カ所のデータセンターに105台のサーバーを置いて統合的に運用している。

 また、メディアやコンテンツ制作の業界では、日々大量に作られるデジタルデータの保管にHyperStoreが使われている。「米国のあるメディア企業は、動画コンテンツがニュースやスポーツといったジャンルごとに別々の場所に保管されているという課題を抱えていた」とツォCEO。HyperStoreを導入することによって、データを物理的に移動・整理しなくても、全ての動画コンテンツを一つのシステムとして扱えるようになった。「メタデータを使った検索も容易」とツォCEOは指摘する。

 医療やヘルスケアも、HyperStoreのオブジェクトストレージが強みを発揮する分野だ。主な導入先としてツォCEOが挙げるのは、英国の国民保健サービス(NHS)、オーストラリアのMedicare、サウジアラビアの保健サービスなど。米国の国立保健研究所(NIH)では、パブリッククラウドでの保管が望ましくない研究データを格納するためのオブジェクトストレージとしてHyperStoreが活用されている。

 このほか、IoTの領域では現場の機器から送られてくるセンシングデータを蓄積する目的でHyperStoreが使われている。このセンシングデータをアナリティクスやAIで処理すれば、機器の障害を事前に察知して対処する予防保守が可能。モノ作りのサービス化にも貢献することだろう。金融業では、大量に発生する送金データなどのトランザクションのログの長期保管にHyperStoreを活用。米国の警察機関では、警察官が身に着けているボディカメラの動画データをHyperStoreでアーカイブしているという。

ネットワールドはパートナー網を
通じてHyperStoreを広く販売する

 「19年の夏に、VMwareがCloudianとのパートナーシップを発表した。このときに、HyperStoreのディストリビューターとなろうと決めた」と、HyperStoreとのなれそめを森田社長はこのように振り返る。CloudianがVMwareのクラウド管理プラットフォームに対応した「Cloudian Object Storage for vCloud Director(vCD)」を発表したのは、19年6月。このvCDは、VMwareのソフトウェアをホスティングの形態で提供するクラウドサービス事業者(VCPP)向けのソフトウェアだ。

 「当社のパートナー企業にはVCPPとなっているリセラーが多いので、vCDと連携できるオブジェクトストレージに対する需要が増大することは明らかだった」と森田社長。大手SIerもパブリッククラウドと連携できるオンプレミスのオブジェクトストレージを必要としているので、「Amazon S3互換のオブジェクトストレージ」という市場がこれから急速に立ち上がるはずだと森田社長は読んだのである。

 このような経緯から、ネットワールドはHyperStoreのディストリビューション業務を19年12月にスタート。VCPPとして活動しているパートナー企業を通じて、中堅企業やスタートアップ企業を含む幅広い層にHyperStoreを供給し始めている。ネットワールドがHyperStoreに託している思いは、AWSが提供しているさまざまな便利機能をハイブリッドクラウドやプライベートクラウドで利用できるようにすること。「HyperStoreでAWSと社内インフラを連携させておけば、何か都合が悪くなったときにも“実家”に帰ってくることができる」と森田社長はいう。

 また、HyperStoreを取り扱うパートナー企業向けに、ネットワールドはさまざまな支援策も用意している。「リセラーの方々を集めてハンズオンセミナーを開催するほか、HyperStoreの公式トレーニングコースも企画している」と森田社長。社内の検証施設(PIC/GARAGE)にはHyperStoreの検証機が設置され、パートナー企業やエンドユーザーが使用中のAmazon S3対応アプリケーションの互換性検証に利用できるようになる予定だ。

 「当社のリセラーパートナーは、世界に500社以上。その方々には、ストレージだけを売るのではなく、コンプリートなソリューションとして販売していただきたいとお願いしている。例えば、バックアップ、アナリティクス、AIといったソリューションだ。HyperStoreには強い競争力がある、というのが当社の確信。お客様への提案で困っていることがあったら、ぜひ相談してほしい。必ず、案件をクロージングに持ち込んでみせる」(ツォCEO)。

 森田社長は、「当社が供給するHyperStoreは、Cloudian純正のアプライアンス。ハードウェア的にもソフトウェア的にも完成度が高い製品であるため、日本のお客様が求められる信頼性にきちんと応えることができる。また、Amazon S3向けに作られたサードパーティー製ソフトウェアをオンプレミスで使うためのストレージとしても、HyperStoreはぴったり。クラウディアンと力を合わせて、プライベートクラウドやオンプレミスの環境にもオブジェクトストレージを広めていく」との方針を示している。
 
  • 1

外部リンク

米クラウディアン=https://cloudian.com/jp/

ネットワールド=https://www.networld.co.jp/