視点

DAOが切り開く地域活性化の未来

2025/03/26 09:00

週刊BCN 2025年03月24日vol.2052掲載

 2月8日、沖縄県那覇市で開催されたミチシルベという沖縄の未来を語るイベントに参加した。その中で地域創生の一つの手段として「DAO」(分散型自律組織)利用についてのセッションがあった。DAOはブロックチェーン技術を基盤とし、中央集権的な管理者を持たず、コミュニティーのメンバーが意思決定を行う仕組みが特徴だ。

 DAOを活用した地域活性化の事例は増えている。例えば、北海道余市町では、地域特産品の開発と販売をDAOで運営している。地元住民や関心のある投資家がトークンを保有し、商品開発や販売戦略の決定に投票で関与する。これにより、地域外の支援者を巻き込みながら、特産品のブランド価値の向上と販路拡大に挑戦している。

 米国ワイオミング州でもDAOを活用した土地開発の事例がある。CityDAOは都市運営を行うプロジェクトで、約16ヘクタールの未開の地ながら空港からのアクセスが良く、水源に近い土地を実際に購入し、NFT(非代替性トークン)で販売した。Citizenと呼ばれる購入者は、その使用権や運用に関して意見を述べることができる。

 イタリアのボローニャ市では、DAOを活用した都市再生プロジェクトが進行中だ。歴史的建造物の保全や地域の文化活動の支援にDAOが利用され、参加者がプロジェクトの方向性を決定し、資金の透明性を確保している。

 このように、DAOは地域の資源を有効活用しながら、多様な関係者を巻き込むプラットフォームとして機能する。

 日本においても、DAOの導入は可能性を秘めている。例えば、過疎地域での観光資源開発や地域通貨の発
行・管理にDAOを活用することで、住民主体の持続可能なまちづくりが実現できる。DAO的な考え方で「ローカルIPO」を香川県三豊市で進めている事例もある。所有から使用へ、DAOの透明性と参加型の運営モデルは、地域活性化における新たな選択肢となり得る。

 今後は、実証実験を通じた成功事例の積み重ねと、制度面での整備がかぎとなるだろう。技術の進化に伴い、より参加しやすく、運営しやすいDAOの仕組みが登場することで、Web3技術の地域活性化への貢献度も一層高まることが期待される。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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