視点

AI社会におけるACCSの使命

2024/12/25 09:00

週刊BCN 2024年12月23日vol.2042掲載

 生成AIの登場によって、誰もが簡単に「作品」をつくることができるようになった。著作権の問題はつきまとうが、それでもこの流れを止めることはできないだろう。法的な問題は社会全体でクリアにしつつ、いかにうまく付き合っていくか、そう考えたほうがいいと思う。

 法的な問題をクリアにするためには、関係者が現状を理解し議論して合意形成する必要がある。そこで11月末に「AI技術の進歩と、著作権における“現状を理解”~生成AIと声~」と題したパネルディスカッションをコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)主催で開催した。人の声は人権と捉えたほうがいいかもしれないが、法的に保護されていない。しかし、声優の声が勝手に使われていいわけがない。生成AIと著作権を考える上で、声は直感的に分かりやすいと考え、このテーマを選んだ。

 では、なぜACCSが主催するのか。それは、ACCSは著作権者団体であるが、会員企業はソフトウェア開発企業が多いからだ。意図しない著作権侵害を防ぐ保護技術、セキュリティー技術を開発する企業もある。しかも、著作権者関連団体の横のつながりは強い。俳優や声優など実演家団体とも普段から付き合いがあり、彼らとのハブになれる。ソフトウェア技術がわかる企業で構成され、かつ、生成AIに脅かされる団体のハブとしてACCSがふさわしいと考えている。

 著作権が、プロではなく一般ユーザーの間で問題になったのは、著作物がデジタルで提供されるようになったからだ。ACCSはこの問題にいち早く取り組んだ。元からデジタルで供給されたソフトウェア企業の集合体として、「法」と「電子技術」「教育」の観点から活動を継続してきた。生成AIの時代においても、法的な問題をクリアするため先頭に立つのは、ACCSが最適任だと思う。

 今回のパネルディスカッションに参加していただいた声優の池水通洋・日本俳優連合副理事長からは、「ソフトウェア業界は敵だと思っていたが、自分たちの人格や表現の価値を守ろうと考えてくれる人がいることを知り安心した」との言葉をいただいた。

 「生成AIと著作権」のパネルディスカッションは年度内にあと2回開催する。ぜひ、この問題をACCSと一緒に考えて、安全安心な情報社会づくりに貢献していただきたい。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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