視点
取材先からの要求
2024/11/06 09:00
週刊BCN 2024年11月04日vol.2036掲載
弊紙は、報道目的で取材した内容について、紙面やWebに載せる前の原稿確認はお断りしている。なぜなら、事前に内容を見せることで、公平性や公正性が担保できなくなると考えているからだ。取材される側が、どのように報じられるかを事前に把握し、自らの組織に関する話題を正確に発信してもらいたいとの気持ちは一定理解できるが、だからと言ってメディア側に踏み込むのはどうかと思う。
仮に確認した場合、自分たちにとって都合の悪い内容が載っていたとしたら、どう対応するのだろうか。もし書かれている内容が事実だとしても、黙認するのは難しいだろう。どうにかして記事が出る前に止めようとするのではないだろうか。それが当たり前になった場合、もはや憲法が保障する自由な言論や表現はなくなってしまうし、選別された都合のいい情報にしか読者は触れられなくなる。そんな世の中であっていいと多くの人が望んでいるのか疑問である。
とはいえ、真偽が不確かな情報も含めて何でもかんでも発信していいわけではない。正確性には万全を期し、読者にとって有益な情報を発信するのが大前提なのは重々承知している。その上で、たとえ取材先にとってマイナスになることだとしても、書かなければいけないことは書くのがメディアの役割で、それができるのは日本の良さであると考えている。
最近はメディアの姿勢に厳しい目が向けられており、当然ながら記事が間違っていれば厳しく指摘される。一方、誤解された情報が独り歩きしたり、意図的に流されたデマによって世の中が混乱したりする場合もある。メディアとしても、情報の取り扱いには、これまで以上に慎重にならなければならないと感じている。しっかりと気を引き締めて日々の取材に取り組み、これからもビジネスに役立つ正しい情報を発信して読者の期待に応えていきたい。
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