視点

ACCSの活動とセキュリティー

2024/10/30 09:00

週刊BCN 2024年10月28日vol.2035掲載

 コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(現ソフトウェア協会、SAJ)の中に設置されたソフトウェア法的保護監視機構が独立して1990年に誕生した。その独立を主導した監視機構の幹部たちは当時、30歳代が多かった。監視機構の代表だったT&Eソフトの横山俊朗社長(当時、以下同)が39歳。大阪から来ていたエム・エー・シー ハミングバードソフトの今西守社長も39歳。マイクロソフトの古川享社長が36歳。ジャストシステムの浮川和宣社長は41歳だった。

 みんな、本業で突っ走りながら、ゲームソフト、ビジネスソフトなどの法的保護、産業・文化の発展という理念を実現するためにはいかなる知的財産権制度や組織が必要か、ソフトウェア業界のあるべき姿を真剣に考え議論していた。

 通商産業省(現経済産業省)は、著作権による保護でなく、特許法的なアプローチをする「プログラム権法」を策定していたこともあり、ACCS設立に対し強くけん制してきたが、われわれは文化庁の下に公益社団法人をつくった。若さも相まって、みんなが理念を持って志に燃えていた。

 あの日々から35年。ACCSが撲滅に力を入れてきた違法コピーは今も存在するが、それがいけないという認識は広く浸透している。その上で、35年にわたる著作権保護活動で強く思うことは、著作物であれ、個人情報やビッグデータであれ、情報には価値や意味があるということだ。

 今や情報が、経済、そして文化をけん引している。守るべき情報が、著作物だけではなく社会の中に溢れている。それら情報の価値を理解することは保護の観点でも重要だ。

 ACCSには今年、高度な認証技術を活用したセキュリティーサービスのサイバートラストが理事として加わった。守るべき情報があるからセキュリティーが求められる。その意味で、著作権保護活動の経験を土台に、情報の価値や意味を知り、法と電子技術と教育の三つで情報を守るとの発想で仕事をしたい。私を含めみんな年を取ったが、これがACCSの新しい理念になり得るのではないかと考えている。

 オービックビジネスコンサルタントの和田成史社長が理事長になって、フォーラムエイトやピーエスシー、さくらインターネットなどSAJの重鎮理事会社が参画してくれている。会員企業はほとんど共通なのに、省庁の思惑で団体同士が対立を余儀なくされた35年前とは隔世の感がある。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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