視点

奥田喜久男先輩、ありがとう!

2024/09/04 09:00

週刊BCN 2024年09月02日vol.2028掲載

 BCNの創業者で社長だった奥田喜久男さんが亡くなった。私は1987年からソフトとウェアの違法コピー対策に取り組み始めた。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が独立したのは90年。その翌年に、原稿を書かないかと声を掛けていただいたのが奥田さんとの出会いだったと思う。東京・大塚の居酒屋で、それ以前から私のことを知っていたと言う。以後、奥田さんとは幾度もハードウェアやソフトウェアなどPC業界の話をしてきた。奥田さんは生粋の日本酒党。うんちくを語り、酒場での立ち居振る舞いの指南を受けた。最近は何となく気がかりで連絡をしていた。本当に残念だ。

 奥田さんは、PCの技術や機能ではなく人に焦点を当てた紙面づくりを目指したと語っていた。90年代にあれだけあふれていたPCの雑誌が次々と消えていく中で、業界紙として確固たる地位を築き、BCNを引っ張ってこられた奥田さんには最大の敬意を表したい。ありがとうございました。

 訃報に接しながらも、われわれの仕事は続いていく。7月末には会員会社であるカプコンの協力を得て、大阪で中高生を対象にした著作権イベントを開催した。

 今の中高生は学校で著作権について勉強している。ただし、難しいものだと敬遠しているのではないかと私たちは心配している。そこで、生徒たちには身近なゲームの制作現場を見て体験してもらい、ゲームに関連した著作権について、より正しく理解してもらおうとの狙いである。

 当日は3チームに分かれて、普段は立ち入ることのできない収録スタジオで効果音をゲームに合わせて制作する体験などを行い、後半はゲームに関連した著作権の説明をした。2日間で2回行ったのだが、最初は緊張した様子でおとなしかった生徒たちが、最後には著作権に関する質問やイベントの感想を次々と出してきた。自分たちが大好きなゲームに関連させた解説を聞いたことで、著作権をより自分のこととして感じてくれたようだ。このイベントの様子は大阪の民放の番組でも取り上げられた。

 9月には、ビジネスパーソンを対象にして、生成AIに関するセミナーを開催する。

 奥田さんから「どんどん書きなさい!」と背中を押してもらって、はや33年。今後も初心を忘れず、よりよい情報社会づくりに向けて、AI時代をリードしていきたい。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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