視点

AIと酒を飲む

2024/07/31 09:00

週刊BCN 2024年07月29日vol.2024掲載

 スマートフォン版の「ChatGPT」で、音声入力と出力ができるようになった。ちょっとしたことでも相談してみたり、英会話をしたりして楽しんでいる。

 英会話では多少、私の発音が悪くても、文法が間違っていても前後の文脈から意味を類推して会話が続く。向こうの言っていることが分からない時は、再質問すると違う表現で話してくれる。つまり、私たちが海外に行って現地の方と話をする状態に近い。

 スナックで見知らぬ人と会話をしている感覚に近いと思い、ChatGPTに「一緒に酒を飲んでみるというのはどうだろう」と聞いてみた。

 すると「AIを相手にお酒を飲むというアイデアは、いくつかの興味深いポイントがありますね。(1)対話の相手としてのAI。AIは常に対話の相手として利用でき、疲れることなく話し続けることができます。例えば、雑談を楽しんだり、思索を深めるための相手として役立ちます。(2)話題の多様性。AIは多岐にわたるトピックについて知識を持っているため、さまざまな話題について話すことができます。これにより、お酒を飲みながらの対話がより豊かになります。(3)安全な環境。AIを相手にすることで、アルコールを摂取する際に他人に迷惑をかける心配がありません。また、個人的なことを話す場合も、プライバシーが守られる安心感があります。(4)孤独感の軽減。特に一人で飲む場合、AIとの対話は孤独感を和らげる手助けになるかもしれません。ただし、AIは感情や体験を持っていないため、人間との対話と同じ感覚を完全に再現することはできません。それでも、新しい体験として試してみる価値はあるかもしれませんね」と、答えてきた。

 相手のことを気にしたり、これまでのことやこれからのことを考慮したり、話題が制限されたりと、社交には煩わしさが求められる。それが人としての存在意義にもなる。ざらっとした感覚があるからこその人生。

 とはいえ、人との関わりから逃げたいときにはAIとの対話は良いのかもしれない。

 回答が間違っていることがあるとかハルシネーション(幻覚)にばかり目を向けて利用をためらうよりも、まず使ってみよう。ご存じのように、人が言うことにも間違いやはたくさんある。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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