視点
情報社会の文化発信力を高める
2024/07/10 09:00
週刊BCN 2024年07月08日vol.2021掲載
45年前に大学を出て、著作権に関わるようになってから35年以上、ほとんど休まずに仕事をしてきた。強がって言えば、いい休養の機会にはなった。入院中は読書三昧。AI関連から社会学まで20冊以上を読んだ。
休む機会だったとはいえ最低限の仕事はしなくてはならない。病院にはスマートフォンとPCを持ち込んで、何度かWeb会議もこなした。インターネット回線によって社会とのつながりはあったが、ハンディキャップを持つ人にとって、ITがいかに重要か身をもって知ることにもなった。
著作権法にプログラムが著作物として例示(明文化)されて来年で40年。コンピューターソフトウェアを著作権法で保護するのか、別の法律をつくるのか、当時の文化庁と通産省による大論争があったことを知る人は少なくなった。
40年前にデジタルで流通していた著作物はプログラムだけだったから、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、デジタル著作物の保護に一日の長があると自負している。しかし本当の強みは、著作権保護活動を通じて得た警察とのパイプではないかと思っている。今やソフトの保護は、商標法や不正競争防止法なども駆使する状況だ。付け加えれば、ACCSは合理的な契約の順守のもとに、安全安心な社会づくりに力を尽くしている。
会員企業との関係も財産だ。企業と障がい者のマッチングサービスを提供するミンナのミカタは入会してまだ3年だが、私は「日本から障がいという言葉と概念をなくす」という理念に共感して応援している。図らずも私が重傷を負い、こうした志を持つ企業の理念と、和田成史理事長が掲げる「よりよく生きる」ためのDXの普及を体感することができた。これもけがの功名か。
思えばACCSが誕生した35年前も、コンピューターの力で社会を変えようと大きな志を持ったPCソフトのメーカーの先達と仕事をしていた。改めて、こうした企業の理念やポリシーに共感しつつ、権利を守り、ACCSは文化発信力を高めていきたい。
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