視点

物流の「2024年問題」を支援する釜山港

2024/06/19 09:00

週刊BCN 2024年06月17日vol.2018掲載

 今年4月から、トラック運転手の残業上限規制や勤務インターバル制度が導入された。この、いわゆる物流の「2024年問題」を乗り越えるため、企業の対応が進み始めている。その中で、韓国の釜山港の活用が有効な手段の一つとして動き出してきた。

 釜山港は貨物の取扱量が世界第7位のハブ港であり、日本向け航路の主流は九州や日本海側の港との取り扱いである。活用例を挙げると、タイのバンコクから富山に貨物を運ぶ場合は、名古屋港に着けてトラックで陸送するか、釜山港に着けて富山港行きの船に積み替えて運ぶことができる。バンコクから新潟に貨物を運ぶ場合も、横浜港からトラックを使うか、釜山港経由で海上輸送することが可能だ。

 釜山港の日本との港湾別積み替え貨物の取扱量は、横浜港、神戸港など五つの主要港湾への出入りが40%で、60%は秋田港や博多港などの日本海側を中心とする地方港だ。つまり、釜山港は日本の地方港と結ぶことにより世界のハブ港としての位置を確立してきた。

 今までは日本の主要港からトラックの輸送距離がおおむね300キロ内外であったが、物流の2024年問題では、この距離を200キロ内外まで引き下げようとする動きが出ている。これは、日本の陸上輸送力がそこまで追い込まれているということでもある。

 例えば、東京港から那須塩原までのトラックによる輸送距離は200キロだが、釜山港を経て小名浜港か常陸那珂湊港から出発すると100キロで済み、トラック輸送の負担が減る。釜山港はこれまでの日本海側の地方港を結ぶ路線が中心であったが、今後、太平洋側の地方港にも広がる可能性がある。

 日本の物流各社はすでに動き始めている。例えば、NIPPON EXPRESSホールディングスは、釜山港へ関連の設備を整備しており、同社の拠点である地方の30港と連携して地方港を経由した輸出入業務などを強化している。

 釜山港湾公社の日本代表部の朴濟晟(パク・ジェソン)代表は、「釜山港は積み替え荷物の比率が45%と高く、これまで日本の地方港と共に発展してきた。2024年問題など、日本社会の新たなニーズに対応していきたい」と意欲的だ。

 
アジアビジネス探索者 増田辰弘
増田 辰弘(ますだ たつひろ)
 1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。
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