視点
両利きのプロジェクトマネジメント
2024/06/12 09:00
週刊BCN 2024年06月10日vol.2017掲載
新しい思考法や方法論が出てくるたびにセミナーが開催され、メディアでは特集記事が組まれ、名前を冠した団体が発足したり、認定試験が行われたりする。しばらくするとブームは過ぎ去り、本質的なエッセンスすらなかったものとして忘れ去ってしまう。日本人の悪い癖である。
20代の初めから構造化言語でプログラミングを行い、30代からプロジェクトマネジメントを中心に業務コンサルティングを行なっている筆者は、構造化思考にべったりの人間だ。業務コンサルティングの本分は「クライアントの課題の本質を対話と現場を通して見極める」と「課題を構造化する」「改善の進捗を数値で計測できるようにする」の三つであると心得ている。
ところが近年は変化が速い。コロナ禍のような、これまでの経験値や構造化思考では解決できないテーマが増えてきている。
そんなときに有用なのがデザイン思考である。クライアントをはじめマーケットや地域の声に耳を傾け、共感し、問題を定義し、アイデアを出して素早くプロトタイプをつくりテストしてみる。
構造化思考では固定的であったゴールを、フレキシブルに変えて対応するということになる。業務コンサルティングの本分の一つめである「クライアントの課題の本質を対話と現場を通して見極める」について、ビジョンマップやプロタイピングを行なって了解を取っていくと捉えても良い。
構造化思考を否定するのではなく、変化の速い時代においては、ゴール設定にデザイン思考を取り入れることでプロジェクト運営がフレキシブルになる。双方の利点を取り入れた両利きのプロジェクトマネジメントが有効だ。
適用分野としては、顧客や地域課題を起点とする分野や、ありたい姿を追求するビジョンドリブンな組織経営が適している。
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