視点

AIの活用法は自前のAIに相談を

2024/05/15 09:00

週刊BCN 2024年05月13日vol.2013掲載

 そろそろAIの社内導入をお考えではないだろうか。クラウドサービスで提供されるパブリックAIを体験し、いろいろなAIセミナーを受講してみたものの、AIで何をすべきかお迷いではなかろうか。そんな皆さんへの提案は「AIで何をすべきか迷ったら、迷わずAIに相談しよう」である。

 しかし、パブリックAIではそんなことができるはずもない。パブリックAIはあなたのことはもちろん、あなたの会社のことも知らないのだから。もし知っていたとすれば、それはそれで怖い話である。そんなことは起きてほしくない。

 本当に役立つアドバイスをAIに求めるには、AIがあなたの会社の内外情報を詳しく、正しく理解している必要がある。そのようなAIはどこにも存在しないはずだから、あなた自身でそのようなAIを育てなければならない。あなたの会社専用のプライベートAIである。

 あなたとあなたの仲間で会社の内外を詳しく教え込めば、やがてAIはあなたのビジネスを理解し、さまざまなことに役立つ答えを話すようになるだろう。自社専用のAIを活用すれば、あなた自身もまだ気付いていない、あなたの会社の潜在能力を引き出してくれるかもしれない。

 自社専用のAIである大規模言語モデル(LLM)を効率的に使うためには、三つの技術環境の整備が必要である。これらはLLMOps、DataOps、DevOpsと呼ばれ、それぞれがAIの開発と運用をスムーズにするための相応の役割を担う。

 一つめのLLMOpsは、LLMが正しく機能しているかを監視し、必要に応じて調整する機能を提供する。これには、多くの人が同時に使うときでも問題なく動作することも含む。二つめのDataOpsは、LLMが必要とする情報を適切に管理し、データが常に正確で安全であることを保証し、データの品質を維持し、効率的に処理されるよう管理を行う。三つめのDevOpsは、既存システムを含む全システムの開発と運用の連携を強化し、LLMを含む新しいバージョンのリリースを迅速かつ頻繁に行う。これにより、開発と運用の間の連携が強化され、迅速な問題解決が可能になる。

 これらの環境整備を適切に行うことで、LLMの導入と日常業務への効率的な組み込みが可能になる。プライベートLLMの導入を検討されてはいかがだろう。

 
株式会社SENTAN 代表取締役 松田利夫
松田 利夫(まつだ としお)
 1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
  • 1