視点

優秀な人材を確保するために

2023/06/14 09:00

週刊BCN 2023年06月12日vol.1972掲載

 弊紙では毎号、IT業界のトップを対象としたインタビュー企画「KeyPerson」を掲載している。見開き2ページのスペースでインタビュー中の写真を載せているのに加え、表紙にもインタビュイーの写真を配置している。

 大手企業や注目企業など、インタビュイーが所属する企業や団体の規模はさまざまだが、過去の掲載例を見ると、男性が圧倒的多数を占める。紙面では、KeyPersonのほかにも各記者が取材・執筆した記事がある。幅広い肩書の人を取材しているが、こちらも男性のほうが目立っている。

 政府は6月5日の男女共同参画会議で、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針)」の原案を示し、東京証券取引所プライム市場上場企業の女性役員比率に関する数値目標を設定した。具体的には、▽2025年をめどに女性役員を1人以上選任するよう努める▽30年までに女性役員の比率を30%以上とすることを目指す―の二つが盛り込まれ、これらの目標を達成するための行動計画の策定を推奨するとしている。

 国内では、女性の活躍が叫ばれて久しい。政府は男女平等社会の実現を目指しており、IT業界では、役員や管理職への女性の登用に向けて対応している企業がある。われわれが取材している範囲では、企業や業界団体の幹部はまだまだ男性が多いが、徐々に変化の兆しは見えている。

 この時代に性別について論じるべきではないのかもしれないが、政府や企業が目指す女性の活躍の方向性に異論はない。能力の高さに性別は関係ないし、優秀な人こそリーダーとして組織を引っ張っていくべきだと考えているからだ。

 ただ、「女性だから」という理由で役員や管理職にするのは、女性にとっては迷惑な話だろう。以前、ある会社で要職を打診されていた知人の女性は、性別が選考理由の一つになっていたことを知り、不快感を示していた。数値目標が設定されると、それを実現することが求められるようになるが、実力や実績で当人を評価することが何よりも肝要だ。

 人材の確保は、企業にとって大きな課題になっており、女性の活躍について真剣に向き合うべき時期になっている。組織の風土や文化を変えるのは簡単ではないだろうが、IT業界で変化が加速し、性別に関係なく、より優秀な人が紙面に登場する機会が増えることを期待したい。

 
週刊BCN 編集長 齋藤 秀平
齋藤 秀平(さいとう しゅうへい)
 1984年4月生まれ。山梨県甲州市出身。2007年3月に三重大学生物資源学部共生環境学科を卒業。同年4月に伊勢新聞社(津市)に入社し、行政や警察、司法などの取材を担当。16年4月にBCNに入社。リテール業界向け媒体の記者を経て、17年1月から週刊BCN編集部に。上海支局長を務め、22年1月から現職。旧姓は廣瀬。
  • 1