視点

ルワンダ発展のかぎはICT

2023/05/03 09:00

週刊BCN 2023年05月01日vol.1967掲載

 今年3月下旬に1週間、ルワンダ共和国を訪問した。1994年の痛ましい大虐殺や2008年の大規模な地震の後、目覚ましい復興を遂げるルワンダは「アフリカの奇跡」と呼ばれている。

 ルワンダは自国の生き残りと尊厳を取り戻すための長期国家戦略「VISION2020」を終え、高所得国を目指し、19年に次期国家戦略「VISION2050」を発表した。その五つの柱は、(1)人材開発、(2)競争力強化と統合的経済発展、(3)農業による富の創造、(4)都市化と産業集積、(5)責任と能力のある国家機能の構築だ。どの柱においてもICTは重要であるため、ルワンダ政府は海外の支援を積極的に受け入れながら重点的に取り組んでいる。

 今回、私が訪問したのは現地の保育園とコンピュータースクール、起業家育成施設の3カ所。保育園では支援物資としてPCやタブレットが支給されているが、教師が教えるどころか自分が使えないという施設もあった。また、コンピュータースクールでは回路の説明などの教授法や指導案の作り方に課題を抱えていた。逆に起業家育成施設では熱量が高く、海外のベンチャーなどを招いて議論が行われていた。

 日本からは国際協力機構と神戸情報大学院大学、PwCコンサルティングが、ルワンダ向け技術協力プロジェクト「デジタルイノベーション促進プロジェクト」を受託し、22年5月30日から25年5月29日の期間で支援を行なっている。そのほかにもプログラミングスクールを開いてオフショア開発の拠点としてITエンジニアを育成している日本企業や、インターネット回線の引かれていない地域に衛星経由で通信を行い遠隔教育を支援している企業もある。

 今後、人口爆発が予測されているアフリカにあって、ルワンダも例外ではない。21年時点で1300万人であった人口は50年には約2倍の2210万人に達するとルワンダ政府は予測している。その過程でさらなる経済格差の拡大や貧困層の増大、環境破壊や資源の枯渇、そして食糧不足にならないためにも今からの対策が必要だ。

 人口減少に悩む日本と人口爆発を迎えるルワンダ。両国によるICTを活用した協力関係が双方に持続的な経済発展をもたらすことを切に願いたい。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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