視点

DXかどうかはどうでもいい

2023/04/26 09:00

週刊BCN 2023年04月24日vol.1966掲載

 「自分たちのこの取り組みは、DXに当てはまるのでしょうか」

 このような相談をいただくことがある。ただ、失礼ながら、そんなことはどうでもいい話ではないかと思っている。いまの自分たちが置かれている状況を正しく理解し、存続する上で何が危機につながるのかを見極め、それを解決することが重要であり、DXであるかどうかは重要なことではない。

 自分たちが直面する課題を明確に見定め、それに向き合い行動することは、今も昔も変わらない。その手段としてデジタルは有効ではある。デジタルだからこそできることがあり、圧倒的なコストパフォーマンスで課題を解決することも可能だ。しかし、デジタルを使うことが目的ではない。課題を解決することが目的であって、デジタルはその手段に過ぎない。

 実際のところ、アナログな業務プロセスをデジタルに置き換える程度の表層的なデジタル化、つまりデジタルを使うことをDXと称する企業は多い。なにもそれが悪いわけではない。しかし、社会はデジタル技術の発展と普及によって、人々の行動や思考の様式が大きく変わりつつある。そんな、根本的かつ本質的な変化に対応し、ビジネスモデルやビジネスプロセスを再構築すること。言い換えれば、会社をつくり変える覚悟が必要だ。対症療法的な「デジタル化」ではなく、デジタル前提の社会に適応できるように会社を変えていく必要がある。

 つまり、デジタルを手段としてだけではなく、社会のあり方を変えるムーブメントと捉え、事業戦略や経営戦略を変革することができなければ、企業の存続は難しくなるだろう。

 「DXという言葉の定義や解釈」を知って満足するのもいいが、いま自分たちが直面する根本的で本質的な変化に目を向けてみてはどうだろう。そこから実践の筋道を考えることだ。DXであるかどうかは、どうでもいい。自分たちの置かれている現実に真摯に目を向け、デジタルが前提の社会とのかい離を見据え、謙虚に受け止めることだ。これを克服する取り組みを愚直に行えばいい。それが結果としてDXになるのだと思う。

 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
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