視点

生成型AIでプロの手元から離れるIT

2023/04/05 09:00

週刊BCN 2023年04月03日vol.1963掲載

 今回の視点原稿の執筆に当たり、「ChatGPT」にすべて書いてもらえないものかと企んだが、自動生成される原稿案をいくつも眺めてみるも、そのまま使えそうなものを得るには至らず、結局、ChatGPTに助けてもらいながら自力で執筆することとした。要は、私の文章の悪癖をChatGPTの出力に入れ込むプロンプトが見つからなかったということである。この原稿は「GPT for Sheets and Docs」という拡張機能を組み込んだGoogle Chromeブラウザー上で「Google Docs」を使って執筆している。いずれも無料で使えるものばかりだ。

 この数カ月、ChatGPTを始めとする新興AIサービスをわが社で展開中のITビジネスにどのように活用できるか試行を繰り返してきた。中小企業のDX推進支援向けに自社で整備したアジャイル開発環境への埋め込みとアプリ開発試験、ビッグデータ利用環境構築・開発・運用管理基盤技術のパンフレットやマニュアルの作成、情報システム・リモート運用管理BPOサービスのお客様向け告知メールの自動生成など、社内で誰かが思いついたことをいろいろ試しているのだが、アイデアが尽きることなく次々と用途が思い浮かんでくる。それも単にアイデアにとどまることなく、開発実装に至るまで、いとも簡単に進めることができてしまう。

 開発現場経験が2~30年というエンジニアたち曰く、これまで自分たちが長年にわたって現場で積み上げてきた技術知識のほとんどがこれで済んでしまう。今、自分たちは「自分たちの仕事を無くす仕事に取り組んでいるのだろう」と。そう、彼らに対する私の頼みは、これまで長年にわたり自らの努力で積み重ねてきた知識や経験をできるだけ無用なものにする試みを続けてほしいということ。そして、その先にこそ、これからの時代のエンジニアとしての価値がどこにあるか見つかるはずだと願う。

 中小零細企業のDX推進という視点に立てば、IT人材の不足という問題は生成型AIの普及により大幅に軽減されると考えられる。生成型AIの登場で、自然言語によるユーザーインターフェースが格段に進歩した。これまで専門技術と考えられてきたプログラミング作業も早晩、一般ユーザーが自前で実践できるようになることに疑う余地はない。50年程前にうたわれたエンド・ユーザー・コンピューティングという前人の思いが現実になるときが目前に迫っている。

 
株式会社SENTAN 代表取締役 松田利夫
松田 利夫(まつだ としお)
 1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
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