視点

AIチャットの熱狂とその後の世界とは

2023/03/15 09:00

週刊BCN 2023年03月13日vol.1960掲載

 この1カ月、私の周りはAIチャットの話題で熱狂している。少し前までは、「答えが正確でない」「信頼性に乏しい」という意見があったが、利用しているうちに使い方が少しずつ見えてきた感じだ。

 ある企業の経営者は、経営戦略の案を作らせたり、議事録を書かせたり、契約書のテンプレートを作らせたりしていた。ある農家の方は、ネット上にある論文のサマリーを200文字で書かせていた。ある研究者は、英文記事の翻訳をさせていた。あるライターは、自分の書いた文章の校正をさせていた。そして、あるプログラマーは仕様を与えてプログラミングさせたり、コードをきれいに書き直させたり、別の言語で書き直させたりしていた。

 そこそこ実力のあるアシスタントが24時間365日、爆速のレスポンスで回答し、専属で傍らにいる。そんな感じだ。
 OpenAIの「ChatGPT」は、検索エンジン大手の米Google(グーグル)も慌てさせている。OpenAIに多額な出資をする米Microsoft(マイクロソフト)が、同社の検索ポータルBingにChatGPTと自社技術を統合したAIチャット機能を搭載したからだ。こちらは、さらに良くできていて、回答の内容を読むたびに「ほー」と感動する。「ググる」が死語になるかもという予測も、まんざら嘘ではないかもしれない。

 これまでChatGPTを使ってみた感想からすると、重要なのは「問いの立て方」だ。よい問いの立て方をすると、よい答えが返ってくる。問いがよくないと、答えも焦点がズレて返ってくる。

 今後「AIチャットを使ってはいけない」ということにはなりそうにないので、これからはいかによい問いを立てられるかが、AIチャットを使いこなし、仕事を爆速でできるようにするためのかぎになりそうだ。どんな道具でも、使い方次第ということだ。

 大学教育の現場では、学生の論文の剽窃をどう見抜くかが話題となっている。今のところ、かなり難しいというのが大方の見解だ。学生の何の能力をどう問うのかという根源的なところまで話がおよびそうな感じである。

 熱狂の後の静けさが訪れた時、世界はどう変わっているのだろうか。今から楽しみである。ちなみに、この文章は私自身が書いている。 

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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