視点
レガシーITビジネス脱却の頃合いか
2022/12/14 09:00
週刊BCN 2022年12月12日vol.1949掲載
国産ワープロ開発会社の社長と全国紙の紙面で対談したのはその少し前だったろうか。ユーザーはワープロに対してより多様な機能を求めるものだと主張する彼に対し、追加機能を随時オンデマンドで手に入れられる時代になれば、ユーザーは多様な機能を求めるよりも価格重視へ変わるのではという意見をぶつけて議論がかみ合わなかった。今では身近で同社のワープロユーザーを見かけることはない。
ある会計ソフトベンダーの社長には「日本にはパッケージソフトベンダーと呼ばれる企業は数社しかありません。そしてそのすべてが会計ソフトベンダーです」と言われて、至極納得してしまったこともあった。パッケージソフト開発企業で、パッケージソフトの販売だけで生計を立てられる企業は国内に何社もないという意味だ。
PCやパッケージソフトを買いに家電量販店へ足繁く通っていたのは、何年前のことだったろうか。かといって、今使っているクラウドサービスは無償のものばかり。
国内大手SIerが自社データセンターを立ち上げ、仮想化技術や自動運用技術の採用でシステム運用管理業務の95%を削減できたと、その会社の役員に自慢げに語られたとき、「それは子会社への運用管理業務のアウトソーシングが95%減るということですか」と思わず聞いてしまったということもあった。
それからしばらく経って、欧州の大手通信機器技術会社の役員には、当時同社が開発中のクラウド基盤構築の自動化技術が完成すれば、運用管理技術要員1人で1万インスタンスの仮想サーバーが運用することができると言われた。
そして昨年、大手金融機関の情報系システム基盤がクラウド運用に移行したという話を聞かされた。何かとトラブルには見舞われているようだが、どうにか無事に運用されているようだ。ここでも多くのエンジニアが就労機会を失ったに違いない。
エンジニアをユーザーサイトへ派遣し、頭数を時間貸しで売るという人貸商売は最早風前の灯か。ここ数年来のDX騒動の真っ只中で、レガシーITビジネス脱却の頃合いを迎えていると感じているのは私だけではなかろう。
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