視点
斬新で注目に値する「SDGsビジネス」
2022/11/30 09:00
週刊BCN 2022年11月28日vol.1947掲載
まず、同社のような縫製工場だと膨大な端切れが発生する。千曲市の本社工場だけで1日あたり10キログラムになる。このほか天草工場(熊本県天草市)や、中国、インドネシア、ミャンマーの海外工場の分を合わせると、1日あたり50キログラムにもなる。その多くは焼却処分されてきた。
そこで同社はシャツの端切れを使い、新しい商品開発を行った。端切れを5枚ほど重ねたうえで切り込みを入れたデザインの布を使用して、しゃれたクッションカバーやブックカバーなどを製造する。複数の生地を重ねた布に切り込みのデザイン入れる手法は、スラッシュキルトと呼ばれる。生地の組み合わせや重ね方、切り込みを工夫することで、一点ものの商品ができあがる。すでにクッションカバーは家具店、ブックカバーは書店などで、それぞれ販売されている。
このほか、リメイクアイテムの商品開発も行った。両親や家族が亡くなると膨大な衣服が残る。これをリメイクして、例えば子犬のぬいぐるみなどを作り上げる。位牌は抱いて眠れないが、子犬のぬいぐるみだと抱いて眠ることができる。思い出の詰まった服をリメイクして、傍らに寄り添う心憎い商品にした。こうした、かけがえのない思いが詰まった商品が、いま静かなブームを呼んでいる。
しかし、注目すべきはここからである。同社はこの動きを大きくネットやマスコミなどに発信した。次第にSDGsに熱心な企業、地球環境対策に取り組む企業として社会に注目されるようになる。そうすると、同社に就職したいという若者が増えてくる。同社のオーダーメイドシャツを扱いたいという店が増えてくる。驚いたことに、これまでお金をかけて焼却処分していた端切れを購入したいという業者まで現れる。まさにSDGsビジネスが大当たりしたのである。同じことでも、どう取り組むかによって局面は大きく変わるのである。
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