視点

小規模企業向けDX推進の試み

2022/10/19 09:00

週刊BCN 2022年10月17日vol.1942掲載

 ソフトウェア協会(SAJ)で「中小企業DX推進のための情報通信システム環境整備支援ワーキンググループ」という長い名前のワーキンググループを今春立ち上げ、さまざまな観点から自由闊達な意見交換を行った。ただ、メンバー間で共有できるような活動の方向性を定めることができず、せっかく参加していただいた方々をすっかりお待たせし、大変申し訳ない状況に陥ってしまった。

 そこで、活動の方向性を定めるため、まずはユーザーのみなさんの声を集めようと思い、従業員が数十人規模の小規模企業で、DX推進に関心を寄せる経営者を探し、どのような支援が必要で、どのような問題を解決したいのかを個々に聞き、実際にDX推進の取り組みのお手伝いをするという試みに着手することにした。

 協力していただいた企業のみなさんには、WindowsデスクトップPCと、ひかり電話付きの通信回線を用意してもらい、それにDX推進に役立ちそうな機能満載の仮想アプライアンスを設置することとした。

 この仮想アプライアンスには、これだけあれば大概のDXテーマに対応できるだろうと思われる諸機能を、オープンソースを使って思い付くままに片っ端から盛り込んだ。使用したオープンソースは、今や国内の大企業で日常的に使われているものや、日本では一般に知られていなくても海外での利用実績が高いものを中心に選択した。一般的なユーザーがDX推進で求められるような機能はおおむね盛り込んだつもりだ。

 アジャイル開発環境も用意したので、足りないものはこれで開発すればよい。ユーザーが望む機能の多くは数日から数週間もあれば開発できる。また、ユーザー管理機能を含め情報システムの運用管理に必要な機能も一通りそろえたので、開発したら即刻運用を開始することが可能だ。今は、経営者一人一人と話し合いながら、DXとして何を実現したいかを聞いて、それに相応する機能の使い方を説明し、使いながら次のテーマを聞き出すという日々を積み重ねている。

 さて、これがITビジネスとして成立するかが問題なのだが、今のところ、内蔵機能群だけでおおむねユーザーのみなさんの希望には応えられており、廉価なサブスクモデルとして成立する可能性は高いと思われる。この経験をワーキンググループに持ち帰り、みなさんと議論することにしている。

 
株式会社SENTAN 代表取締役 松田利夫
松田 利夫(まつだ としお)
 1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
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