視点

BSCに「SDGsの視点」を追加する

2022/09/21 09:00

週刊BCN 2022年09月19日vol.1939掲載

 「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とは、デジタルによるビジネストランスフォーメーションを略したものだ。

 そのDXが組織に起きるのは、二つのパターンがあると私は考えている。一つはデジタル技術によって「組織のビジョン」が変わるパターン。もう一つはビジョンは変わらないが、「戦略」がデジタル技術によって変わるパターンだ。

 前者は新しい事業の立ち上げに多く見られるが、大きく事業の見直しを行う際にも見られる。例えば、ネット銀行はデジタル技術が無くては成立しないビジネスモデルだ。一方、後者はファッション業界で実店舗からスタートして通販も行うようなパターンだ。あるターゲット層に衣類を提供するというビジョンは変わっていない。通販という戦略を追加したかたちになる。クリック&モルタルの進化系で店舗では試着だけをして、買い物は通販でということになると、全く異なるビジネスモデルになる。

 ビジネスの現場でアクションプランを具体的にどうするかを考えると、そこで採用したいデジタル技術が見えてくる。こうした、ビジョンと戦略、アクションプランの構成を表記し、「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」の四つをバランスさせ、評価基準と資源配分まで考えるのが「バランスト・スコア・カード(BSC)」だ。経営戦略とアクションプランを整理するフレームワークで、キャプランとノートンが1992年に発表した。

 BSCは、私もビジネスコンサルティングの現場で使い続けており、業務の整理にとても有効である。近年、デジタル技術の活用に当たって全体活動の整理に使っているが、第5の視点として「SDGsの視点」も加えるようにしている。実際は社会貢献やSDGs達成に向けた活動をしているのに、四つの視点に入らないからと除外しているケースがあったからだ。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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