視点

営業とエンジニアを再定義しなければならない時代がやってきた

2022/09/07 09:00

週刊BCN 2022年09月05日vol.1937掲載

 かつては組織力を使って、人材を大量に集め膨大なコードを書くことが必要とされた。それがいまは少数精鋭で、できるだけコードを書かずに、OSSやクラウドをAPIで繋げて、システム構築できるようになり、劇的なコスト低減、最新技術への即応、変化への俊敏性が手に入るようになった。ユーザー企業のシステム内製が広がっているのも、一つの理由だ。

 もはや、工数を稼ぐビジネスモデルに将来の伸び代はない。当然、営業とエンジニアの役割も見直さなくてはならない。

 営業については、マーケティングとの役割分担を本来のあるべき姿に戻し、営業がクロージングに注力できるようにすべきだろう。マーケティングの役割は、本来、市場調査、企業ブランド向上、案件創出だ。

 この二つをやってきた企業は多いが、案件創出を営業に背負わせてきた企業は多い。しかし、コロナ禍にあって、顧客との直接的な接触を制限される中、ウエットな人間関係を前提とした昭和時代に一般化した営業活動は使えなくなり、営業の生産性を著しく低下させている。

 また、ユーザー企業による内製化の拡大で、営業は事業や経営の最前線からITニーズを引き出すことが求められている。言い換えれば、高いレベルでのテクノロジーの常識や事業、経営について、対話できる能力が要求される。

 一方、エンジニアは、工数として「ひと山いくら」的な計算ではなく、圧倒的な技術力で一人の価値を高めて、高額商品として「お値段はいくら高くても構いません」的な存在にしなくてはならない。圧倒的な技術力で顧客の内製チームに入り、スキルをトランスファーする「内製化支援」が、大きな需要を生みだす。このような人材が圧倒的に不足している。

 昭和から受け継がれてきた役割やスキルを再定義しなければならない。それは、「工数で稼ぐ」から「技術力で稼ぐ」へと事業目的を再定義することでもある。このような施策を先送りにしていれば、優秀な人材がいなくなってしまう。そうなる前に、変革の鉈を振り下ろすべきだろう。

 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
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