視点

働き方の変化はどこに向かうか

2022/05/25 09:00

週刊BCN 2022年05月23日vol.1923掲載

 ITベンダーと話をしていると、「取材はオンラインとリアルのどちらが多いか」と聞かれることが増えてきた。新型コロナウイルスの感染状況に振り回されているITベンダーにとっては、以前のようにオフィスへの出社に戻すか、それともコロナ禍で普及したテレワークを主軸のままにするか迷っているようだ。

 コロナ禍に新社会人として入社した人を除き、多くの人にとって、仕事はオフィスで進めるのが普通とされてきた。しかし、従業員の安全を守るために、各企業はテレワークにかじを切った。時間や場所に関係なく、自由に働けるようになったことはメリットとして挙げられている。一方、従業員同士のコミュニケーション不足や生産性の低下などをデメリットとして指摘する声もある。

 企業は、業績を向上させ続けることをステークホルダーから求められる。テレワークが成長を鈍化させる要因と経営陣が判断すれば、廃止に踏み切る企業もあるだろう。しかし、幅広い世代が働く企業において、社員に受け入れられるかは新たな問題になる。テレワークの廃止や継続については賛否があるが、私の肌感覚では次世代を担う若い人たちほど、テレワークの継続を求めているような気がする。各企業の状況はどうだろうか。

 IT業界では、コロナ禍で多様な働き方を支援する動きが急激に広がった。感染が拡大した当初は、テレワークが商談の切り口として重要視され、各ベンダーは特需ともいえるニーズを取り込み、成長につなげた。最近はリアルとオンラインを組み合わせたハイブリッドワークも提案のテーマになっている。ITベンダーだけでなく、別の領域で事業を展開している企業が参入を目指す動きもあり、関連の市場は活発化しつつある。

 日本は、戦後から高度経済成長期などを経て、世界有数の経済大国になった。その間、今では敬遠されがちな長時間労働が常態化した。労働人口が減少に向かう中、これからは効率的に働き、大きな成果をあげることを各企業が目指している。

 コロナ禍が、企業の働き方を変えたことに異論はないだろう。既に転換点を迎え、今後は将来を見据えた働き方を本格的に模索する段階になるとみている。再び国全体が大きく成長するような変化を期待したい。

 
週刊BCN 編集長 齋藤 秀平
齋藤 秀平(さいとう しゅうへい)
 1984年4月生まれ。山梨県甲州市出身。2007年3月に三重大学生物資源学部共生環境学科を卒業。同年4月に伊勢新聞社(津市)に入社し、行政や警察、司法などの取材を担当。16年4月にBCNに入社。リテール業界向け媒体の記者を経て、17年1月から週刊BCN編集部に。上海支局長を務め、22年1月から現職。旧姓は廣瀬。
  • 1