視点

DX推進に必要な「失敗を受け入れる企業文化への変革」

2022/03/16 09:00

週刊BCN 2022年03月14日vol.1914掲載

 あるIT業界団体で、中小企業のDX推進を支援するワーキンググループを立ち上げた。当該団体の会員に限ることなく、非会員の方々にも声を掛けて、現時点で十を超える企業や団体、個人の方々に参加していただいている。

 参加メンバーは、ITベンダー、ITコーディネータ、中小企業診断士、セキュリティコンサルタント、システムインテグレーター、IT製品流通事業者、クラウドサービスプロバイダー、DX推進を計画中のユーザー企業そして個人事業主とさまざまだ。

 活動開始に当たり、参加メンバーの間で活動の方向を共有するため、オンラインでフリーディスカッションを行った。参加メンバーの皆さんをお誘いする際に、中小企業でDX推進を図る目的で社内情報システムの環境整備支援から始めたいという主旨をあらかじめ伝えしていたのだが、予想通りというか期待通りというか、それぞれの立場によって異なる視点から意見が噴出し、改めてDX推進支援活動の難しさを目の当たりにした。参加メンバー間で共有できるDXの捉え方と活動指針を示さねばならない。

 まず、DXはその捉え方が企業ごとに異なるため、すべての企業に当てはまる定義を定めることは難しい。これはIT事業者でも同様だ。例えば、ITソリューションベンダーは提供するソリューションの機能の利便性や導入効果を訴えるが、システムインテグレーターはそれを構築し運用管理するための技術的要件、運用基盤の選択、導入環境の整備という視点に立つ。私自身は後者の視点からDXを捉える立場にある。情報システム部門を持たない中小企業においては、導入環境の整備という視点が欠けている場合が多いように思う。

 また、DXは小規模零細企業から大規模企業まですべてのビジネスにとって不可欠なものと考えたい。ところが、DX関連と称するIT製品やサービスの広告宣伝を見る限り、コスト面から小規模零細企業が取り組むにはなかなか難しそうなものばかりである。IT事業者の端くれとしては、小規模零細企業でも取り組めるDX推進の方法を実践的に示したい。

 さらに、DX推進には企業組織が現状の変革に挑戦し、実験して失敗を繰り返すということを受け入れる企業文化への変革が求められる。企業経営者自身の変革から始めねばならない。

 
事株式会社SENTAN 代表取締役 松田利夫
松田 利夫(まつだ としお)
 1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
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