視点

技術的負債と内製化とDX

2022/02/09 09:00

週刊BCN 2022年02月07日vol.1910掲載

 GAFAはテクノロジーを武器に、圧倒的な競争力を生み出している。日本企業もこの現実に気付き、自分たちもまたテクノロジーを武器に、競争力を生み出そうと動き始めている。ユーザー企業の内製化が勢いを持ち始めているのは、こんな背景がある。では、なぜ内製化なのか。

 「技術的負債」という言葉がある。

 借金をすると利子を払い続けなければならないように、システムを開発すると利子のように改修し続けなければならず、それが負債のように積み上がることの比喩として使われている。

 最初は、整然と実装されたシステムでも、ビジネス環境やユーザーニーズが変われば、改修しなければならない。そんな改修を繰り返すうちに、システムは複雑性を高め、改修スピードは落ちていく。

 ビジネスにスピードが求められる時代にあって、これは致命的だ。これまでのやり方のままでは、改修は激増し、あっという間に技術的負債が膨れあがってしまう。

 そんな技術的負債を発生させないためには、アジャイル開発やDevOps、コンテナやサーバーレスなどの「モダンIT」を駆使して、できるだけコードを書かずにビジネス目的を達成しなくてはならない。

 GAFAは技術的負債を回避するためにモダンITを駆使し、1時間に1000回以上ものシステム改善を行っているそうだが、そんなスピード感覚がいま求められている。

 ところが日本企業では月に1回でも改善できればいいほうで、半年に1回、1年がかりというのも珍しくない。これでは技術的負債は積み上がるばかりだ。

 DXは、そんなお客様の内製が支えることになるだろう。これをITベンダーに期待できるならいいが、それができないので、自分たちで内製しなくてはならない。しかし、お客様が十分な技術力を持つ人材を確保することは大変なことだ。だからこそ、内製を圧倒的な技術力で支える「内製化支援」が求められている。

 DXを看板に掲げるのも結構だが、まずは、こんな現実に真剣に目を向けるべきだ。そして、顧客のDXに貢献しようというのなら、自分たちもモダンITのスキルを磨き、顧客の内製を支援することだ。今後、そんな需要が大きく伸びていくだろう。

 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
  • 1