視点
連獅子と事業承継
2021/11/24 09:00
週刊BCN 2021年11月22日vol.1900掲載
今年7月に米アマゾン ウェブ サービス(AWS)のCEOに就任したアダム・セリプスキー氏に連獅子を重ねて見るのは多少強引か。前任のアンディ・ジャシー氏はAWSの立ち上げを主導し、2016年にCEOに就任。今年7月に、アマゾン・ドット・コムのCEOに“昇格”した形だ。AWS日本法人の長崎忠雄社長によれば、「アダムはAWSの立ち上げ当初からアンディの右腕と言える存在だった」という。
ただ、セリプスキー氏は一度、AWSの外に出ている。16年にBIベンダーの米タブロー(19年に米セールスフォース・ドットコムが買収)のCEOに就任したのだ。データ分析・活用の世界の最前線に経営者として身を置き、5年の時を経てAWSに凱旋した姿は、試練を乗り越えて谷底から帰還した子獅子に重なるような気がしないでもない。これからのAWSをかじ取りするために、必要な経験を積んで戻ってきたのだと見れば、継続性のある人事だ。
連獅子のクライマックスでは、獅子の精を演じる祖父と孫が所々シンクロした舞踊を見せるが、雰囲気はどこか対照的だ。長年の鍛錬に裏打ちされた優雅さや威厳を醸し出す仁左衛門に対して、はつらつとして未来を担う次世代の勢いを感じさせる千之助。百獣の王にふさわしい力強さは子獅子、いや若獅子が上回ったように見えた。
時代の歩みは止まらない。今や市場の支配者になった巨大テック企業であれ、伝統芸能の世界であれ、新陳代謝とともに新たな風を継続的に取り入れてこそ、世に認められる価値をつくり続けることができる。
週刊BCNも1900号の節目を迎え、IT産業界や社会に提供する価値をアップデートすべく紙面をリニューアルしました。引き続きご愛読ください。
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