視点

著作権で広がる新たなビジネスチャンス

2021/10/06 09:00

週刊BCN 2021年10月04日vol.1893掲載

 今年11月で65歳になる。年金の受給開始年齢だ。でも私はまだ現役なので、現在の給与ベースと受給時期など何が適切なのかがよく分からない。そんな話をしていたら、協会のご近所、巣鴨信用金庫の人を紹介された。

 以前、別の信用金庫の役員に、地元に密着した金融機関なら著作権・知財ビジネスで困っている企業があるのではないかと、たずねたことがある。今や著作権は、あらゆる企業が何らかの形でビジネスに利用している。私たちの活動は、必ず役に立つはずだ。

 そんな経験から、紹介された巣鴨信用金庫の人にも同様のアプローチをしたところ、彼は担当する企業にコンピュータソフトウェア著作権協会の存在を伝えてくれた。その結果、イデア、クオリア、JS貿易の3社が入会し、一緒に活動することになった。

 早速そのうちの一社で、管理職と現場職員に対し著作権・知財のマネタイズについて言及した。すると、傍らにいた女性社員が下請け仕事だけでなくオリジナルデザインやニューキャラクターを作りたいと言い出した。社長は即座に承認。著作権の価値や意味を知ると、自分の仕事の経済的価値や文化的意味を考えるようになる。常々そう思っていたが、その実例を目の当たりにして、大いに意を強くした。

 大手企業では、法務・総務部や知的財産部門が著作権を始めとする知財の管理業務を行っている。しかし、小さな規模の会社では専任者を置くことは難しいかも知れない。それなら、個々の社員それぞれが深く掘り下げなくとも著作権・知財についての知識を習得することで、新しいビジネスチャンスが生まれる。

 その知識を得るための手段は、今では整備されている。当協会の会員企業、サーティファイが運営するビジネス著作権検定だ。今年7月から、コロナ禍対策から不正防止オンライン受検システムを開発し、Web受検が可能となった。このシステムは特許も出願されている。

 先の3社からは幹部や社員への講演、研修を頼まれているが、せっかくだから3社合同の異業種交流会として実施しようと考えている。社員たちの化学反応やオリジナルデザイン創作をぶち上げた彼女たちの活躍を心から楽しみにしている。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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