視点
「小さな村総合研究所」の挑戦
2021/06/02 09:00
週刊BCN 2021年05月31日vol.1876掲載
この新たな試みに参加している七つの村と販売する主な商品は、北海道音威子府村(音威子羊羹)、福島県檜枝岐村(山の幸を塩漬けにした山人漬け)、山梨県丹波山村(原木舞茸)、和歌山県北山村(柑橘果汁のじゃばら)、岡山県新庄村(サルナシを使ったサルナシ酢)、高知県大川村(玉緑茶)、熊本県五木村(柑橘のくねぶ)である。
店で商品を買う際、客はあまり説明を求めないが、ここではやけに説明を求めている。それを店員が丁寧に説明している。なんで小さな村の商品が売られているのだという疑問を持ちながら、客は購入している。
この店を運営しているのはNPO法人「小さな村総合研究所」(山梨県丹波山村)である。なんでこんな店ができたのかを探ると、小村幸司代表の人生にたどり着く。それ以前は銀行員やテレビディレクターとして地方の経営者や地方自治体相手の仕事をしていたが、大胆にも地域起こし協力隊を募集していた自治体の中で一番人口の少なかった丹波山村に応募し移住した。
そこで小さな村での暮らしぶりに魅了され、全国の小さな山村に興味を抱き、訪ね歩きながら人脈をつくる。そして「G7」をもじって先の七つの村を集め「小さな村g7サミット」を開催する。2016年に丹波山村から始まったこのサミットは毎年場所を変え、内容を充実させてきた。その成果の一つがこの店である。
ネット時代、スマホ時代は、小さいから、地方だから、というハンデがなくなりつつある。やり方次第で小が大を食う時代でもある。ただ、それなりの才覚が必要だ。小村さんのすごいところは、これをさりげなくこなしていることである。
現在、政府は銀行や大手商社の人材を地方活性化の人材として派遣する政策を進めているが、この問題はそれほど単純な話ではない。なんとしてもこの地方を振興させるぞ、という執念とうまく市場に溶け込ませる商人センスを兼ね備えた人材は、それほど多くはないからだ。
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