視点

その情報は消せますか?

2021/04/21 09:00

週刊BCN 2021年04月19日vol.1871掲載

 国内で一番人気のSNSのサーバーが、中国の関連会社からアクセス可能な状態になっていたという報道に始まり、タイムラインや画像・動画、そしてペイメントサービスの取引情報までが韓国のサーバーで保管されているということが分かり、ちょっとした騒ぎになっている。

 日本で提供されるサービスの運用管理を海外企業に委託することも、サーバー運用やデータバックアップを海外の拠点で行うことも今では当たり前なのに、何でいまさらそんなに騒ぐのだろうと思っていたところ、実は政府機関や地方自治体までも利用していたと知って驚いた。

 事業利用には国際的に関連法が整備されるのを待つべきだと思うが、利便性がそれに勝ってしまったということなのか。そういえば、知己の自治体職員から業務用メールは庁舎内でないと利用できないため、外出時のコミュニケーション手段として、馴染みのSNSを使っている人が少なくないと聞いたことがある。

 十数年前にクラウド利用の啓蒙活動を行っていた頃は、海外のサーバー上に格納されたデータには当該国の法律が適用されるという理由で、大半がクラウドの利用を躊躇する傾向にあったことを考えると、隔世の感がある。慣れというのは怖い。

 個人的には、ビジネスコミュニケーションにフリーのSNSを使うことは避けるようにしている。とはいっても、まったく使わないわけではない。国内外を問わず、ビジネス上の知己の求めに応じて止むを得ずユーザー登録をしたSNSもいくつもある。だが、その大半はいまでは使っていない。サービスが廃止されてしまったものも少なくない。登録したアカウント情報は、アップロードしたデータは、どうなってしまったのだろう。また、写真、ビデオ、音楽、電子書籍、仕事で使っていた各種文書など私的に管理していたさまざまなデータをバックアップするために、容量無制限のクラウドストレージサービスに代金を払い、数テラバイトの個人用データをアップロードしたこともある。ところが、このサービサーが経営破綻したため、慌てて手元のハードディスクにダウンロードしたり、消去を試みたりしたのだが、本当にすべて消し去ることができたのかどうか知る術もない。

 みなさんは、いま使っているクラウドサービス上の私的情報を確実に消し去る術をご存知ですか。
 
株式会社SENTAN 代表取締役 松田利夫
松田 利夫(まつだ としお)
 1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
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