視点

テクノロジーで創る5次元世界

2021/04/16 09:00

週刊BCN 2021年04月12日vol.1870掲載

 コロナ禍により多くの価値観が変化した。必要もないのに無駄な行為を強いられ、疑問さえ持たなかった時代から、自分らしく生きることで高い価値を生むことができる時代へと移りつつある。この大きなパラダイムシフトによって社会は大きく変わっていくだろう。

 少し突飛な話だが、スピリチュアルな世界では今年から風の時代に入る。経済重視から心の時代へ、そして人々はこれまで抱えていた固定観念から脱却していくという。そもそも人が認識していることが正しいと考えるほうが不自然だ。見えている「赤」がみんな同じ赤なのか、少しずつ違うのではないか。それは簡単には証明できない。だから5次元世界があるといわれても肯定も否定もできないだろう。

 しかし、テクノロジーでできることを丁寧にあてはめれば、超能力やパラレルワールドと同じ事象を実現しているのだ。ドラえもんの「ほんやくこんにゃく」は、スマホとクラウドのAIによって実用化に近づいているし、パラレルワールドだってそうだ。

 例えばYouTubeのコメント欄に、動画についてネガティブコメントを書き込んだとする。書き込んだ本人の画面にはそのコメントが書き込まれたスレッドが表示されている。しかし、動画投稿者が非表示にした場合、本人以外のスレッドにはその投稿は表示されない。つまり投稿した本人は悪口を投稿し、それを多くの人が見ていると思っているが、ほかの人には表示されていない。これは同じ時の中で違うものを見る、いわゆるパラレルワールドである。1次元は直線の世界、2次元は平面の世界、3次元は奥行きが追加され立体を変化させることができる世界、4次元は時間が加わり時間を変化させることのできる世界。そして5次元は無数の時間軸を持った空間(パラレルワールド)が存在する世界だという。

 これを非科学的だと否定するとしても、私たちがテクノロジーの進化によって実現していることはどんどん高次元の現象を作りだしているのも事実だ。5次元世界では経済的な価値から精神的な価値へと移行し、社会課題は解決しているというのであれば、進化にかかせないITは社会的価値を生む方向にシフトしていく。経済的合理性のみの追求から脱却することが、ねじれた社会の出口に導いてくれるのかもしれない。テクノロジーは武器にすぎない。正しい使い方には人間の強い意志が伴う必要がある。
 
事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
 1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。
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