視点
アジアビジネス探索者 増田辰弘
2021/02/19 09:00
週刊BCN 2021年02月15日vol.1862掲載
トヨタが「工場の生産性は向上するのに、どうして営業活動の生産性は向上しないのか」と素朴な疑問を抱き、同社から依頼され発足した会社がエクスプローラーコンサルティング(東京都港区)である。この会社が急成長し、今やトヨタだけでなくBtoBでは金融機関や保険会社、BtoCでは自動車販売やハウスメーカーなど、どの業種でも大手企業どころを総なめにした感がある。
この会社がどんな特殊なことをやっているのか。結論をいえば、営業活動の地味な作業をオーソライズして積み上げ、その上で各社の方針や営業マンで異なっていた営業行動・管理のモデルをつくりシステム化したのだ。例えば、地方銀行ならば各支店長、役席、営業マンを一堂に集め、営業プロセスの進捗、管理、案件に対するマネジメントを指導する。面談数、新規先の電話アポ、融資提案などで算定した一人当たりの基本営業活動量をもとに、銀行全体が平均的な営業活動を行えるようにする。すごいのは、依頼を受けたユーザーのどこもが大きな成果を上げていることだ。今まで会社の営業は何をしていたのか、と思えるほどの成果なのである。
数年前にカンボジアで、同国初の菓子工場を取材したことがある。全国の店や卸しが工場の前にまさに門前市をなし、経費も輸送費もかからず現金でどんどん商品が売れていく。多くの日本企業もまだ、こうした体験が忘れられずにいる。ハウスメーカーはみんながマイホームを持ちたい、自動車ディーラーはみんながマイカーを持ちたい、という幻想を追いかけがち。だから、十分な営業活動をしないまま分譲マンションを建てると、新聞の全面広告やチラシの配布でなんとかさばけると思っている。
エクスプローラーコンサルティングのビジネスモデルは、「世の中そんなに甘いものではおまへんのや」と投げ掛けたところに大きな価値がある。だから営業サービスでデミング賞まで取ったのである。
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