視点

ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義

2020/12/04 09:00

週刊BCN 2020年11月30日vol.1852掲載

 コロナ禍で「変化の方向」が、変わったわけではない。「変化のスピード」が加速したに過ぎない。3~5年が、半年とか1年という時間に短縮されたということだ。

 テクノロジーの発展はいつも時代を先取りする。働き方の多様化を実現するリモートワーク、これを支えるペーパーレス化やゼロトラスト・ネットワークなどは、ここ何年も語られてきたキーワードだ。クラウド・ネイティブ、アジャイル開発、DevOpsなどもまた、いま生まれたわけではない。

 変化の方向は何も変わらないままに、コロナ禍は、この動きを加速し始めている。しかし、SI事業者の中には、この動きが「足かせ」となっているところもあるようだ。それは、お客様に変化の方向を教えることができないからだ。

 お客様から、次のような質問をされて、あなたは、どう答えるだろうか。

 「このままでは、まずいと思っています。どうすればいいのでしょうか」

 そんな問いかけに、次のような回答しかできないとすれば、お客様は困ってしまうだろう。

 「まずは、何が課題なのか、何をしたいのか教えてください。そうすれば、解決策を提案させていただきます」

 お客様は、解決策を教えてほしいわけではなく、課題や何をすべきかを教えてほしいのだ。それを教えることができないとすれば、まさに足かせである。こんなときにDXと称し、RPA、リモートワーク、AIやIoTなどの導入を進めたところで、回答にはならない。もし、こんな応答しかできないとすれば、「共創」などという言葉を軽々しく使うべきではない。共創とは、お客様とともに、いまの時代の変化の方向を、体現することにほかならないからだ。

 次のように答えられるようになろうではないか。

 「御社の“あるべき姿”はこうです。御社には、こういう課題があります」

 それをきっかけにお客様との対話を始め、お客様に最適化された物語を描き、一緒になってその実現を目指すことが、いま求められている。

 それができるようになるためには、テクノロジーのトレンドに真摯に目を向け、自ら体験し、そこで得たノウハウを提供できるようになることだ。考えるのではなく、行動する。時代は、そんなスピードを求めている。

 
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義
斎藤 昌義(さいとう まさのり)
 1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。
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