視点
株式会社SENTAN 代表取締役 松田利夫
2020/11/20 09:00
週刊BCN 2020年11月16日vol.1850掲載
「このクラウド基盤の運用には先端的な自動化技術を取り入れ、レガシーシステム運用に比べて95%の人件費削減を見込んでいます」「それって、御社の子会社からのオペレーター派遣を95%削減するということですよね」「その通りです」
それから間もなく、欧州大手の通信機器メーカーの役員とクラウド基盤技術について意見交換をしていた際、同社が開発していたクラウド基盤自動化技術を採用すれば、一人のオペレーターで1万インスタンスの仮想サーバーを構築、管理、運用できるようになると聞かされた。
先頃、IBMが売上規模の3分の1(約1兆9700億円)、従業員の4分の1(9万人)を切り離す大規模な分社化を発表した。マネージド・インフラストラクチャー・サービス事業を分離して2021年度末までに分社化し、IBMという冠名を持たない公開会社が設立される。一方、新体制となるIBMは「イノベーションに注力し、より成長率の高いより収益性の高い企業」へと変わるそうだ。僻んだ見方と言われそうだが、「当面のニーズは残っているものの、将来にわたりイノベーションは期待できず、成長率は低く高い収益性も見込めない」部門を切り捨てると読み取ることもできる。
これまで日本のIT業界では、人材ではなく人員を売買してきた。出身学部や専門分野に関係なくプログラミングの基礎教育を受けただけで、いきなり現場に派遣された経験を持つIT技術者は多い。そのほとんどが情報技術や知識の多くを派遣先で実務経験を積み重ねることで習得した。そうした現場経験を通じて隠れた才能が開花し、自己研鑽を重ねて優れたIT技術者への道をたどった人もあるだろう。
しかし、IT技術者としての適性に欠け、新たな技術への適応もままならず齢を重ねてしまう人は少なくない。上記の事例からも示唆されるように、このような従来型IT人材に対する需要は漸次減少していくに違いない。それどころか人材が市場に溢れる可能性が懸念される。従来型IT人材の再教育は誰が担うのか?
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