視点
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
2020/10/23 09:00
週刊BCN 2020年10月19日vol.1846掲載
菅首相は、縦割り行政の解消とともに、デジタル化による効率化を自らの政権で実現すべき主要テーマとして掲げている。デジタル化をけん引する組織として「デジタル庁」を新設し、行政の効率化を進め、コロナ禍が収束した後の経済成長にも役立てたいとしている。
人と人の接触を避けることが感染症予防の基本であったため、テレワークなどデジタル活用の動きは加速化したが、行政においても民間においてもデジタル化は遅々として進んでいない。
そこで、今後のデジタル庁の実施内容を知る手掛かりとして、自由民主党政務調査会デジタル社会推進特別委員会(委員長:平井卓也氏)が20年6月11日にまとめたデジタライゼーション政策に関する提言「デジタル・ニッポン2020 ~コロナ時代のデジタル田園都市国家構想~」を読み解いてみたい。
プロジェクトにおいて最も重要なのは、そのゴール。どのような「ありたい姿」を描いているのであろうか。報告書の中では「デジタル田園都市国家」を今後のめざすべき国家像であると述べている。「都市の持つ高い生産性、良質な情報と、田園の持つ豊かな自然、潤いのある人間関係を結合させ、健康でゆとりのある田園都市づくり」をデジタル社会の推進で実現しようという考え方だ。
30年を到達年限とし、政治/行政、経済、生活、働き方、医療、教育、楽しみ、防災の八つの分野で具体策を提示している。教育の分野については、オンラインとオフラインの組み合わせによるハイブリッド型教育と、学習ログによる個別教育で質を向上。医療の分野では、医療情報の連携や遠隔医療など。政治/行政の分野では、押印の見直しやマイナンバー制度による行政サービスのシステム間連携、RPAやAIの活用などが挙げられアイテムとして特に目新しいものはない。
どの分野においてもカギとなるのが、規制緩和と、データのセキュアな状態を保ちつつカジュアルに利用できる情報インフラの整備だ。ここを改革の本丸としてどう攻略するのか。私たちも利用者の立場として応援していきたい。
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