視点
アジアビジネス探索者 増田辰弘
2020/05/29 09:00
週刊BCN 2020年05月25日vol.1826掲載
確かに、誰が指導者であったかによって各国の差は大きくなった。一番手腕を発揮したのが台湾の蔡英文総統である。彼女の動きは素早かった。武漢で新型コロナが発生するや昨年12月31日には政府の対策会議、1月20日には対策本部(中央感染症指揮中心)を設置。2月6日に中国からの入国禁止措置を講じた。日本が中国人の入国を完全に規制したのが3月9日であるから、これは大変な差である。
数字は嘘をつかない。感染者、死者数でみると欧米各国よりはましだが、日本政府は台湾や韓国よりも明らかに後手に回った。今までのように、しっかりやっているぞと見せたり、マスクを2枚配るなどの一時しのぎの対策ではとても追いつかない。まさに本気かどうかが試されている。
テレワークだけでなくオンライン授業やオンライン診療も常態化する。そうすると会社間の取引形態も社内の決済の仕方も事務の流れも、一度合理化されかかったものは元には戻らず常態化する。
今までは、製品の効率化、合理化を求め日本企業はグローバル化を進めてきたが、これからは医療品、食料品などの戦略商品や生活必需品は国内生産率を高めるなどリスク管理が進む。必然的に貿易の取引規制や数量規制も進んでくる。
経済政策もそうである。これだけ経済が破損すると、新型コロナが解決しても住宅や自動車などは並べれば売れ出すというわけにはいかない。企業や個人の懐が打撃を受けると、一気にV字回復ということにはならない。蒸発した需要の回復という、これまであまり経験したことのない新しい経済政策が不可欠となる。ここでも各国の知恵比べが始まる
このように新型コロナ後はまさにすべての分野で未踏、未知の領域に入る。政府も企業も個人も、どれくらい想像力が醸成できるかが勝負となる。大きくいうならば経済システム、社会システムが変わると思っていい。日本は少し平和ボケで、緩んでいるところが心配である。
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