視点

事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦

2020/04/03 09:00

週刊BCN 2020年03月30日vol.1819掲載

 コロナウイルス の感染防止策としてリモート会議システムやリモート展示システムの販売が好調で、弊社にもバーチャル展示会を開きたいという問い合わせが多く寄せられている。弊社はバーチャル空間を自由に作成して配信するツールを提供しており、バーチャル空間に展示場を自由に作れるし、その空間でリモートアクセスして接客もできる。これはリアルに集合できない状況の今、バーチャル展示会やリモートでの接客を行うという意味では有効な手であると思う。

 ただ全員にVRゴーグルをかぶらせるのか、といったところについてはユーザの利便性を考えなくてはならない。では、どう活用してもらったら、もっと有効活用できるのか。そこまで考えて提供しない限り効果は減少する。これらのリモートツールは、リアル会議やリアル展示会の代わりにやるもので、リアルの効果が「10」だったら「8」くらいの効果があればいいと考えている人がほとんどである。しかしPCを介しての会議や展示会をそのまま代替手段として行ったのでは、リアルを越えることは決してできない。そこに気付いて提案をしてほしい。

 感染症対策にありもののパッケージをそのまま売るだけではなく、活用方法まで含めて顧客提案を行う必要があるのだ。バーチャルでしかできないプレゼンテーション、リアルでは到底体験できないお試し体験など、リモートで行うことに利点を見出すのではなく、バーチャルでしかできないことを軸にソリューションを考えると、一歩先のサービス開発につながると考えている。

 弊社では株主総会をバーチャル空間にリモートで集まってもらい、そこで行っているが、業績のグラフは立体で宙を舞い、最新事例は株主が実際に体験できるようにVR空間に没入し再現。パワーポイントのように2次元のプレゼンテーションではなく3次元の表現方法を使い行っている。それは全く新しい顧客体験であり、バーチャル空間だからこそできる重力や経費を無視した表現を可能としているのである。今後さまざまなプレゼンテーションは3次元になると考えられており、その予備練習としては最適である。

 コロナウイルス による経済萎縮は大きなものであるが、これを機にデジタル化をより有効なものとするためにITベンダーがもっと提案力をつけてもらいたいと考えている。新たな時代に向けたチャレンジに期待したいと思う。
 
事業構想大学院大学 教授 渡邊信彦
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)
 1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。
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