視点

一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕

2020/02/28 09:00

週刊BCN 2020年02月24日vol.1814掲載

 コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(現・コンピュータソフトウェア協会)から独立して今年で丸30年になる。昨年11月には、文化庁や警察庁、会員企業の担当者と歴代理事長らを招き、創立30年パーティーを開催した。これを機に、今後10年のACCSの役割といったことを考えることも増えた。

 ACCSの英語表記はAssociation of Copyright for Computer Softwareだが、略称は「斧」を意味するAXEと発音が近いと当時の事務局長が考案した。本当は、斧を振りかざすような強面とは思われたくなかったが、それでも会員企業の著作権をないがしろにする悪質な業者に対しては刑事事件化も含めて毅然と対応してきた。

 今後10年の活動としても、著作権侵害対策を外すことはできない。ただし、著作権法だけで健全なビジネスを阻害する行為に対処できない事案も出てきており、不正競争防止法など他の法律の活用も必須だ。また、ソフトバンク元社員による機密情報不正取得事件が記憶に新しいが、知財・トレードシークレット等の企業情報の秘密保護なども睨みつつの権利保護活動になるとも考えている。

 一方、創立以来、力を入れてきた教育・啓発活動については、広く著作権法の存在自体を知ってもらう活動がこの30年で完了したと考えている。ビジネスパーソンを対象に行っている出張講演も「著作権侵害を避けるための注意点」から「いかに著作権をビジネスに生かして利用するか」にテーマがシフトしつつある。

 これからのSociety5.0社会、価値デザイン社会やSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の実現等において、著作権の知識は最低限の素養になるだろう。すでに著作権をビジネスの武器として認識している企業もある。商業施設や展示会、博物館などの空間をデザインする専門会社の丹青社では、1000人近くの従業員のほとんどがビジネス著作権検定を受検したと聞く。

 著作権法を勉強することで、自社や他者が持つ著作物の価値を知るとともに、ビジネスにおける発想も広がるはずだ。著作権は、企業にとっても重要なツールだという認識を広めるべく、これから10年の活動を続けていきたい。さらに、山口大学や東京工芸大学などの教育機関でも、次代を担う若者への著作権・情報教育を積極的に応援したい。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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