視点
アジアビジネス探索者 増田辰弘
2020/01/31 09:00
週刊BCN 2020年01月27日vol.1810掲載
人口が増えた要因は、第1に盛り沢山の前向きな政策にある。第3セクター方式による地域版総合商社の設置、都会の子どもの島留学、インセンティブが魅力的なUターン、Iターン政策などこれまでの常識にとらわれない政策である。
第2は地方の持つ特有の因習係数を低めたことである。地方の衰退は企業が少なくて選択できる職場が乏しいうえ、さしたる根拠もなく長く続いている地域独特の習慣、因習が排他性を生んでいることである。この因習係数をかなり低めたのだ。
日本経済は年功序列、業界主導、官治(監督官庁)支配、並び文化など農村集落型で、これが高度成長時代は威力を発揮したが、GAFAに代表される今日のデジタル社会では逆に足かせとなり、生産性が低く先進国では唯一のゼロ成長国家となっている。
第3はSNSの活用である。インターネットで「知夫里島の景色」を引くと60万件も出てくる。すさまじい量なのだ。村役場や観光協会が仕掛けたのでなく、島を旅行した人と村人との人情レポートなどが勝手連的に数を増やし、その結果、旅行客を呼び込み注目を集めているのだ。
第4は、新住民の村人との協調性である。人口の増加はほとんどがUターンでなく、Iターンである。このIターンの新住民の感性がすばらしい。村人の行事に付き合うレベルではなく、草取りや祭りなどの下働きは、彼らなしでは成り立たなくなってきている。
企業でも自治体でも個人の人生でも、長き因習と固定観念に縛られ挑戦、イノベーションを無くしたときに長き停滞は始まる。
逆にどんな悲惨な状況でもあきらめずに挑戦し、イノベーションを仕掛けたときに局面は大きく変わる。人々に忘れられかけていた、日本海に浮かぶ小さな寒村の挑戦がわれわれに教えてくれる。
- 1