セントラル情報センターは、組み込みソフトや業務アプリケーション、通信系のシステム開発などを幅広く手掛けるSIerだ。大手ITベンダーからの仕事に加えて、独自ビジネスの拡大にも力を入れており、「バランスのとれた収益構造」(長谷川武之社長)を強みとしている。1972年に創業して以降、数度の景気変動に直面してきたが、例えば、業務系の仕事が減ったときは、組み込み系の仕事で補うなどして、粘り強くビジネスを伸ばしてきた。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 セントラル情報センター
所在地 東京都渋谷区
設立 1972年
資本金 9000万円
従業員数 約340名(グループ連結)
事業概要 日本鉱業(現JXTGエネルギー)が設立した情報システム子会社「セントラル・コンピュータ・サービス(現NTTデータCCS)」に参画していたメンバーが独立して設立。インドに開発子会社を置き、将来的にはインド市場への進出も視野に入れている。組込みシステム技術協会(JASA)会員企業。
URL:https://www.cic-kk.co.jp/
粘り強さで不況を乗り越える
長谷川武之 代表取締役社長
長谷川社長が入社したのは、セントラル情報センターが創業して6年目の78年だった。もともと電気電子を学んでいたこともあり、当時、主流となりつつあった8ビットマイコンをベースとした組み込みソフト開発を手掛ける。80年代に入ると、自動車や家電製品などの日本の産業界は“ものづくり世界の頂点”に迫る勢いで成長していたときで、この波に乗って産業向けのビジネスを大きく伸ばすことになる。
大手ITベンダーからの仕事も順調だった。大手コンピューターメーカーが受注した金融機関のオンラインシステムに関する案件に参画したり、当時、急速に普及していた現金支払い専門のキャッシュ・ディスペンサー(CD)と金融機関のホストコンピューターを接続するシステム構築案件にも関わった。CDとホストコンピューターとの接続では、「CDという専用機とホストを接続するネットワークの知識も必要で、通信プロトコルや文字コード変換の複雑さをしっかり学んでいったことが発注元から高く評価された」(長谷川社長)と振り返る。
90年代に入ると「平成不況」「失われた10年」と言われる経済低迷期間が続く。こうした中でも、組み込みやネットワーク、業務アプリケーションの分野をバランスよく展開してきたことで、景気変動にうまく適応して乗り越えることができた。しかし、急激にIT投資が冷え込んだ2008年のリーマン・ショックでは、売上高が一時的に15%余り減るなど大きな打撃を受けてしまう。大手ベンダーからの発注が絞られたことが原因だった。
大手ベンダーと良好な関係にあっても、受注環境が悪化すると外注費削減の名の下に、下請けの仕事はどうしても減ってしまう。客先に常駐しているメンバーも続々と会社に戻ってきて、SEの稼働率も下がる。長谷川社長が、取締役として経営の一端を担っていたこともあり、「より一層、不況に強い事業構造にしていく必要がある」と痛感した。
セキュリティの“かかりつけ医”に
長谷川社長は、大手ベンダーの案件に協力会社として参画する割合と、エンドユーザーと直接取引する元請けの割合をうまくバランスさせることに力を注いだ。規模の大きい大手ベンダーがなかなかカバーできない中堅・中小企業ユーザーを主なターゲットとして、その中でも手薄になりがちな情報セキュリティに着目。「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)」の認証取得支援や、クレジットカード情報を保護する「PCI DSS」の審査対応支援といったコンサルティングサービスを軸に、エンドユーザーへの提案活動を本格化させる。
IT活用が進み、中堅・中小企業ユーザーでも多くの個人情報やカード情報を扱うようになった今、情報セキュリティの重要度は一段と高まっている。しかし、同時に情報セキュリティの水準を保つための技術やノウハウも高度化しており、「中堅・中小企業ユーザーには重荷になっているケースが多く見られる」ようになった。そこで、セントラル情報センターが、ISMSやプライバシーマーク制度、PCI DSSといったセキュリティ認証の取得を支援するコンサルティングサービスを提供することで、「情報セキュリティの“かかりつけ医”のような役割を果たすことができる」(長谷川社長)と考えた。
セントラル情報センターにとっても、情報セキュリティ関連ビジネスは、エンドユーザーと直接取引の割合を増やすだけでなく、コンサルティングサービスを提供する「サービス提供型ビジネス」の拡大にもつながる。これまでシステム開発に偏重していた収益モデルを改善し、サービス提供型ビジネスの比率を増やすことで、結果的に元請け比率を2割程度まで高めている。
ここ数年は、受注環境が良好で、大手ベンダーからの受注も拡大傾向にある。だが、周期的に訪れる景気変動に備えるためにも、事業形態や収益モデルの多様化は必須。再びリーマン級の不況に襲われても、影響を最小限にとどめる体制を構築し、次の成長につなげていく。