エヌデーデーは、病院や公益といった社会インフラに強いSIerだ。コンピューターメーカーや大手SIerがひしめく社会インフラ領域にあって、長年にわたってエンドユーザーとの直接取引を重視。大きな景気の変動が起こると、下請けSIerが次々と契約を切られていく中、元請け比率の高いエヌデーデーは粘り強く勝ち残ってきた。「たとえ小さなプロジェクトでも、顧客と当社が力を合わせて進めていくことを重視している」と、塚田英貴代表取締役は話す。(取材・文/安藤章司)
Company Data
会社名 エヌデーデー
所在地 東京都中野区
設立 1971年
資本金 4500万円
従業員数 334人
事業概要 医療や公益、金融、解析・制御の4つを得意の領域とする。直近の年商は約45億円。構成比は医療が約4割、その他3領域がおよそ2割ずつを占める。創業50周年に当たる21年には年商50億円を目指している。組込みシステム技術協会(JASA)会員企業。
URL:https://www.nddhq.co.jp/
専門性と独自性で元請け比率高める
塚田英貴
代表取締役
エヌデーデーの創業は1971年。当時は日本電算代行の社名で、東京都水道局の計算業務の代行を請け負う仕事から大きくなったSIerだ。水道局からの紹介で都立病院の情報システムを担うようになり、「病院や公益に強いエヌデーデー」の評価を築いていく。
その後、大規模病院を中心に電子カルテが入るようになると、電子カルテを開発している日本IBMとの協業をスタート。日本IBMの電子カルテの納入を手伝うだけにとどまらず、サブシステムやアドオンソフトなどの開発に参入。システム全体の運用やヘルプデスクサービスも手掛ける。
SIerが勝ち残っていくには、「『専門性』と『独自性』を伸ばしていくことが欠かせない」と塚田代表取締役は話す。病院向けのビジネスを例に挙げれば、中核システムの電子カルテは日本IBMが主導して進めるが、電子カルテと連動する各種の院内サブシステムや、調剤薬局や健保協会といった関連団体向けのシステムについては、エヌデーデーができる限り主導的な立場となってプロジェクトを推進。「病院という専門的な領域で、エヌデーデーが独自のシステムやプロジェクトを進めていく」(塚田代表取締役)ことで、他社との差別化を図ってきた。
病院や公益は、コンピューターメーカーや大手SIerがひしめく領域。そこで中堅SIerが独自性を発揮するのは容易なことではない。それにもかかわらずエヌデーデーがそれを重視するのは、大手の下請けでは景気の変動にどうしても弱くなってしまうからだ。
90年代初頭の土地バブル崩壊、08年のリーマンショックと、景気の波は周期的に訪れる。企業の設備投資が絞られると、大手ベンダーは外注を減らし、内製比率を高めて身を守る。このとき、外注ポジションにいる下請けSIerは仕事量が激減し、経営の危機に直面しやすい。エヌデーデー自身も、そうした危機に直面するごとに、エンドユーザーとの直接取引=元請けの割合を高める方向に舵を切った。
景気変動に強い収益構造で勝ち残る
90年代から元請け比率を徐々に高め、塚田氏が先代を継ぐかたちで代表取締役に就任した98年には、売上高全体に占める元請け比率は5割近くまで拡大。リーマンショックの08年には同6割程度、そして直近では7割まで増やした。エンドユーザーの社数ベースでは150社余りで、「同等規模の同業他社と比べてもエンドユーザー数が多い部類に入る」と、塚田代表取締役は胸を張る。
「専門性」を発揮する領域も、90年代初めに熱流動の数理解析やOA機器の制御、クレジットカードなどの金融に進出している。解析・制御は、科学技術計算のニーズが大きい茨城県の筑波研究学園都市からほど近い土浦市に営業所を開設した時期から受注活動を本格化。金融については、立ち上げ当初こそ大手ベンダーの協力会社の1社として客先常駐が多かったが、先の病院の例と同じように、アドオンやサブシステムといった周辺システムで徐々に「独自性」を発揮してきた。
塚田代表取締役は、「大きなプロジェクトの小さな歯車になるより、小さなプロジェクトでもいいから、ほかの歯車を動かす“軸”になるべき」と話す。大きなプロジェクトに参画すれば、売り上げは増やしやすい。しかし、景気後退や大型プロジェクトが終息すると、とたんにSEの稼働率が下がって収益が悪化してしまう。自ら“軸”となって主体的にビジネスを組み立てていけば、病院なら病院、解析なら解析の専門領域の中で培った独自のノウハウを横展開できる余地が広がる。
ニッチな分野で一つ一つのプロジェクトは、小振りでも景気の波や大手ベンダーが手掛ける大型プロジェクトの影響を受けにくく、安定した経営が期待できる。専門特化し、エンドユーザーとの直接取引を重視し、独自性豊かなソフトウェア開発やサービスを主軸にすることで継続的、安定的な成長につなげていく。