『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)
1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。
機内食でデザートを何にするか聞かれた。候補は二つ。甘党ゆえ、「両方でもいいですか」と聞き返したら、「もちろん、大丈夫です」と対応していただいた。おかげで、至福のフライトタイムを過ごすことができた。
運ばれた二つのデザートは、一つずつ食べてもいいし、同時進行で食べてもいい。両方を食べているのは確かだが、現時点でどちらを食べているかは、スプーンを入れるまでわからない。これは「量子状態」じゃないのかなどと考え込む。比較的早食いなので、二つのデザートが共存する「コヒーレンス時間」が短いのが難点だと、デザートを食べながらほくそ笑んだ。
量子コンピュータ(Quantum Computer:QC)が、おもしろくなってきた。製品化がみえてきたからだ。製品価格が高価になったとしても、クラウドサービスとして提供すればいい。一般企業が気軽に利用できるようになるのは、時間の問題かもしれない。
量子コンピュータの製品化が進む背景には、人工知能(AI)ブームがある。ブームになったことで、さまざまなソリューションが登場し、活用事例も続々と公表されるようになった。なかでも画像解析や自然言語処理は、AIが得意とする分野として導入が進んでいる。また、金融機関のディーリングやローン審査などでは、人の仕事を奪い始めており、AIを脅威と捉える考えも現実味を帯び始めた。
ただ、AIが人間そのものを超えるには、もう一段も二段も上の計算能力が必要となる。そこで、圧倒的な計算能力を誇る量子コンピュータが注目されるようになったというわけだ。AIがブームにならなければ、量子コンピュータの開発は現在ほど進まなかったに違いない。
二種類のデザートの話は量子コンピュータのたとえとしては不適切だと怒られるかもしれないが、量子コンピュータは間違いなく欲張りだ。「0」か「1」の二者択一ではなく、「0」と「1」の値を任意の割合で重ね合わせて保有できる。その欲張りな仕組みのおかげで、桁違いの計算能力を発揮する。
デジタルから量子への変革、量子トランスフォーメーション(Quantum Transformation:QX)。AI以外でも、活用の場がたくさんありそうだ。
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。