日本情報技術取引所(JIET)は5月23日、北陸支部の設立記念式典を開催した。北陸地域は、これまで東海支部の担当範囲だったが、名古屋までの距離は近いとはいえず、一緒に活動することにむりがあった。そのため、北陸支部の設立はJIETにとって悲願だったのである。支部の設立により、新たな会員の獲得も期待される。支部長は、清川茂満・東海支部長がひとまず兼務。支部の運営が軌道に乗り次第、北陸地域から新たな支部長を迎えることを予定している。(取材・文/畔上文昭)
支部設立に絶妙のタイミング
清川茂満
北陸支部長
「今年でなければできなかった」と、北陸支部の設立には今年が絶妙なタイミングだったと清川氏は語る。支部の設立には、地域をまとめる役割を担う有力ベンダーの参加が欠かせない。これまでも北陸支部の設立を模索してきたが、まとめ役がなかなかみつからなかった。それがようやく動き出したのは、北国インテックサービスが幹事を引き受けたため。地域の有力企業のサポートを得られたことで、地域のSIerがまとまり、北陸支部の設立が大きく前進した。ちなみに、幹事にはシステム創造研究所も名を連ねている。同社は2014年6月にJIETの会員となっていて、今回の北陸支部の設立をサポートした。
北陸支部の中心となる金沢について、清川支部長は地域愛が強いと感じている。「県外に出て仕事をするのではなく、地元で受託開発をしたい」と望む企業が多い。そのため、取引所としてのJIETの役割は十分にあると清川支部長は考えている。
北陸支部では、6月9日に初の商談会を開催した。正会員5社でスタートした北陸支部だが、当日は10社を超える地元のSIerが参加。JIETへの入会を検討中のSIerも多く、近いうちに北陸支部の会員企業が10社を超えるとみられている。なお、清川支部長は、活動が安定したところで、北陸支部長の任を北陸で活動する人に任せたいとしている。
5月23日の設立記念式典で支部発足を宣言する酒井雅美理事長
北陸は“日本の真んなか”
システム開発案件の取引所としての役割を担うJIETでは、各支部が独立して商談会などを実施して、取引所としての役割を果たしている。北陸支部も、その基本路線に変わりはないが、清川支部長は北陸が日本の中心に位置することを生かし、新たな取り組みを始めようとしている。
「北陸は、日本の真んなかに位置している。東海地区はもちろん、関東や関西へも同じような時間で行くことができる。ということは、集まりやすいともいえる。そこで、金沢を全国各地にあるJIETの支部の交流拠点にしたい」と、清川支部長は地域の商談会で終わるのではなく、交流拠点とすることで活動を活性化していく考えだ。
ヒントとなったのは、東北支部の活動である。東北支部は、全国各地の支部が開催する商談会に出かけ、東北の技術力をアピールすることで、案件獲得を目指している。東京に依存しがちな開発案件を全国に求めることは、リスクヘッジにもつながる。同様のニーズはほかの支部にもあると考え、東北支部の活動をヒントに金沢の交流拠点化を目指す。
清川支部長は、その意義について次のように語る。「このところはシステム開発案件が豊富で、エンジニアの足りない状態が続いている。全国組織のJIETであれば、全国規模でエンジニアをアサインできる。また、エンジニア不足がいつまでも続くとは限らない。経済の状況が変われば、エンジニアが余るようになるかもしれない。地域による格差も必ず出てくる。そういったときでも、各支部で交流があれば、案件を紹介し合うなどして、地域の片寄りをなくせるのではないか。交流拠点としての機能は、まさに全国組織としてのJIETが生きてくる活動になる」。そのためにも、全国の支部が集まる交流拠点が必要になるというわけだ。
第一弾として、10月6日に全国の支部を金沢に集め、「大商談会」として支部の垣根を越えた商談会を開催する予定である。清川支部長は「まず、第1回の大商談会を成功させて、根づかせたい。大商談会は、年に1回の開催を考えているが、すでにもっと開催数を増やしてほしいとの声もいただいている」ことから、第1回の状況をみて、さらなる展開を模索していく考えだ。