「マイクロサービス、コンテナ、サーバーレス、イベント・ドリブン、FaaS」が、SIビジネスの存続を難しくしてしまうかもしれない。また、最近よく目にする「デジタルトランスフォーメーション」という言葉の本質を理解すれば、それがSIビジネスに破壊的な影響をもたらすことだと理解できるはずだ。
前者は、インフラの構築や運用、アプリケーション開発を根本的に変えてしまう可能性がある。アプリケーション開発者は、インフラやその運用を気にせずにアプリケーションを開発できるようになる。
後者の「デジタルトランスフォーメーション」とは、「人間が仕事をすることを前提にするビジネス・プロセス」から「機械やソフトウェアが仕事をすることを前提にするビジネス・プロセス」へ「トランスフォーム」すること。これまでの業務プロセスは、人間が仕事をすることを前提に設計されてきたが、人間が仕事をする以上、人間のもつ非合理性や労務的な制約を完全に排除することはできない。しかし、一切の仕事を機械やソフトウェアだけで実現できるのであれば、このような制約から解放され、劇的な生産性や品質の向上が期待できる。かつて、そのようなことは非現実的なことだったが、テクノロジーの進化がそれを可能にしようとしている。
この変化の最前線に立たされているのがSIビジネスだ。例えば、インフラ機器の販売や構築、運用は、クラウドや自動化に置き換えられ、手間のかかる構築や運用はクラウドサービスに任せてしまうという流れが定着しつつある。
過去の常識や成功モデルがいつまでも通用することはない。だから、この変化が何処に向かって進んでいるのかを知り、3年後あるいは5年後のために手を打っているかどうかは、自らの未来にとって決定的な意味をもつ。
ITを提案し構築する仕事は、お客様の3年後あるいは5年後に責任をもつ仕事だが、その当事者が、自分の未来に責任をもてないとすれば、お客様からも信頼を失い、ますます自らを厳しい状況に追い込んでしまう。
冒頭に示した「5つの言葉」や「デジタルトランスフォーメーション」だけではないが、未来に向かった変化は急速に進んでいる。だからこそ、この変化の本質を読み取り先取りすることが、生き残りと発展の前提となる。
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義

斎藤 昌義(さいとう まさのり)
1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。