前回に引き続き、bitFlyerの加納裕三・代表取締役へのインタビューの続編を掲載する。ビジネス向けには、まずプライベートブロックチェーンから浸透していくと話す同氏に、その理由や背景について聞いた。(取材・文/本多和幸)
――民間というか、エンタープライズITの世界では、ブロックチェーンのなかでもプライベートチェーンからまずは浸透していくというお話だった。その理由は?
加納 一番大きいのはファイナリティ(取引が確定して覆らない状態)を担保しなければならないということ。パブリックチェーンにはファイナリティがないので、厳密には取引が確定しない。これはとても使いづらくて、金融機関側にも「(採用は)絶対にあり得ない」という声が多い。ファイナリティがないというのは、データベースに書き込んだデータが後で書き換わってしまう可能性があるといっているようなもの。だから、金融機関ではなくても、企業の業務で使うシステムには、ファイナリティがあるプライベートチェーンが採用されると思っている。
パブリックとプライベートはファイナリティの問題がポイント
――ビットコインの場合は、10分~60分ほどで「ここまでくれば確率的にほぼ取引が覆ることはない」という状態になるといわれている。
加納 取引が覆る可能性は時間とともに限りなくゼロに近づいていくが、絶対にゼロにはならない。誤解を恐れずにいえば、パブリックチェーンは“いい加減なデータベース”なのだ。
リレーショナル・データベース(RDB)の場合、コミットされた時点でトランザクション処理が確定され、データが書き換わる。パブリックチェーンというのは、このデータが書き換わる途中の状態がずっとみえているようなもの。要は、最終的に書き換わってしまうかもしれないデータをみていることになる。時系列で書き換わる確率はどんどん下がっていって、ブロックのチェーンが進むほど改ざんは起きにくくなるのは確かだが、データが書き換わってしまう可能性を残したままのデータベースを業務システムのどこに使うのかと考えると、ちょっとイメージしづらい。ビジネスユースでは基本的に許容されない考え方だ。
――パブリックチェーンの価値とプライベートチェーンの価値は根本的に違うということか。
加納 ビザンチン耐性があり、変更不可能性、高可用性を備えているというブロックチェーン特有の価値については、パブリックもプライベートも共通。ただし、何度もいうがファイナリティがあるかないかは、業務用途に適しているかどうかという観点ではものすごく大きな違いだといえる。ほかにも違いはいろいろあるが、ファイナリティの問題に比べれば些末なことだ。