NPO法人の日本情報技術取引所(JIET)の北海道支部は、会員企業がすべて札幌市内に拠点を置いていることもあって、札幌市を中心に活動している。札幌市は、いわずと知れたIT関連企業の集積地である。先進的な取り組みに対する意識の高い会員企業が多く、定期的に開催する情報交換会では、時代の先を見据えたテーマの講演会を開いたりしている。また、北海道内の他団体との交流にも積極的で、共同で「若手交流会」を開催するなど、世代を超えた横のつながりの強化に取り組んでいる。(取材・文/畔上文昭)
アットホームで仲がいい
横田 靖
北海道支部長
開設から約15年になる北海道支部は、年に4回の情報交換会と、年に10回ほど開催しているミニ情報交換会を主な活動として続けてきている。会員数は20社と決して多くはないが、アットホームな雰囲気で、情報交換会などに協力的だという。
横田靖・北海道支部長は、「情報交換会を開催すると、だいたい60人は参加する。会員数は多くないこともあって、アットホームで仲がいい」と語る。そのため、会員が抱えている課題を共有し、情報交換会のテーマとして取り上げるといった取り組みも行っている。「例えば労働者派遣法の改正が、どのような影響をもたらすのか。企業によっては、大きな問題となる可能性がある。そこで、専門家を講師に招き、情報交換会で講演してもらうというようなことも実施している」(横田支部長)。残業代の扱いといった労務的なテーマでは、JIETの社労士に協力してもらうこともあるという。
2月9日開催の情報交換会では、VRやAR、MRをテーマに国際医療
福祉大学大学院医療福祉学研究科の杉本真樹准教授が講演した
札幌もエンジニア不足
北海道のIT業界は調子がよく、全国的な傾向と同様に、人材不足の状況にあるという。「エンジニアが不足している。もちろん、誰でもいいということにはならず、どこも“できる人”を必要としている。どうやって確保していくかは、大きな課題。首都圏のニアショア案件が増加傾向にあるが、受けきれない」と、横田支部長はエンジニア不足を危惧している。解決策の一つとして、JIETとしてニアショア案件を引き受け、会員企業で分担するという対応も検討している。
また、道内の案件では、IoT関連が増えてきているという。広大な土地を活用する産業が多いため、IoTで情報を収集し、作業を効率化するのである。こうした先端の取り組みに積極的なのも、北海道支部の特徴となっている。2月9日開催の情報交換会では、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)をテーマに国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科の杉本真樹准教授を招いて講演会を開催するなど、先を見据えた情報交換にも注力している。
他団体と積極的に交流
北海道支部では、このところ他団体との交流に注力している。その一つが、EMS-JPの北海道支部である。EMS-JPは、電子機器開発に特化したコンソーシアムで、JIETとしてはIoT時代を見据えた交流に期待している。
もう一つは、NPO法人の札幌市IT振興普及推進協議会(UNISON)との交流。UNISONの会員企業は、札幌市内の大手ITベンダーや、大手ITベンダーの札幌支社が多い。そのため、JIETはUNISONに案件の共有を期待するとともに、共同で若手交流会を開催するなど、若手の人脈づくりの場としての連携にも取り組んでいる。また、各団体と連携することで、地域経済の活性化への貢献も期待している。
北海道全域の景況感は、あまりよくないという。最大の要因は、外国人観光客の変化にある。「外国人観光客は減っていないが、体験型の観光が主流となり、いわゆる“爆買い”がなくなった。市内の店舗は、その影響を受けている」と横田支部長。ただ、道内のIT業界は、首都圏の案件が多いこともあって、今のところは大きな影響を受けていない。そのため、地域経済や雇用の担い手として、IT業界に対する期待が大きい。
横田支部長は、「北海道支部の活動をより活発化させるために、会員数を増やしていきたい」としている。そのためには、函館市や旭川市など、札幌市以外の会員の獲得にも取り組んでいく考えだ。