視点
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
2017/01/06 09:03
ITの歴史は、効率化追求の歴史である。イノベーションも、ユーザーエクスペリエンスも、効率化への追求がもたらす産物に過ぎない。by 初夢太郎
ヤマハ発動機(YAMAHA)のヒト型自律ライディングロボット「MOTOBOT」は、順調に開発が進めば、今年中には最高速度200km/hのサーキット走行を実現する。サーキットという限定的な世界とはいえ、200km/hの世界で自律したロボットが正確に判断して、体重移動で自動二輪車を操作する。ポイントは、自動二輪車にはまったく手を加えないところ。MOTOBOTは、人間の代替として機能するのである。
ITの世界において、同様の発想で注目されつつあるのが、RPA(Robotic Process Automation)だ。人間の代わりに情報システムを操作するMOTOBOTのソフトウェア版である。RPAの操作対象となるのは、既存の情報システム。人間がキーボードやマウスなどを使って操作するのと同様に、オペレーションを行う。入力作業、転記作業、集計作業など、一度操作方法を覚えれば、人間よりも正確で速く、何時間でも苦情を言わずに働き続けてくれる。また、情報システムを刷新しても、オペレーション方法を教えるだけでよく、新システムに対して「使いにくい」「前のほうがよかった」などと、現場でありがちな声があがることもない。
もう一つ、ポイントがある。RPAはAI向きということだ。何かとブームのAI(人工知能)だが、多くのIT企業はエンタープライズ分野での適用方法に、まだ具体的なアイデアをもっていない。業務システムにAIを適用するとしても、入力項目が多いなど、簡単には適用できないからだ。
そこで、RPAとAIの融合である。AIのエンジンは既存システムに積むのではなく、操作する側のRPAに適用する。賢い頭脳は、一つあればいい。業務システムは本来の役割である“データ管理”に集中できる。AIにとっても、人側に立つほうが能力を発揮しやすい。RPAとAIの融合、RPAIだ。さらにIoTで、RPAIoT。なぜかERPも、うっ、ERPAIoT……。
おとそ気分はこれくらいにして、本年も週刊BCNをよろしくお願いします。
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