札幌市に本社があるSOCは、福島県と東京都に支社を構えている。支社は顧客ニーズに応えるためにあるのだが、朝倉幹雄・代表取締役会長は「いずれは支社をなくしたい」と語る。支社の業績が悪いわけではない。案件が減っているわけでもない。北海道に社員を戻し、北海道で活動することで、北海道のIT産業に貢献したいという気持ちがあるからだ。そこで同社が注力しているのは、ニアショア開発の受注。さらには海外の案件も受けられる体制を目指している。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 SOC
所在地 北海道札幌市厚別区
資本金 2000万円
設立 1979年4月
社員数 312人
事業概要 システムインテグレーション、ソフトウェア開発、ソフトウェア保守、IT教育
URL:http://www.socnet.jp/ ニアショア開発を伸ばす
SOCは、1978年創業の老舗SIerである。事務機器の販売店からの依頼でソフトウェアを開発するなど、当初は道内の案件を中心にこなしていた。ところが90年代に起きたバブル経済崩壊のあおりを受け、開発案件が激減してしまう。そこで取り組んだのがパッケージ製品の開発だった。

朝倉幹雄代表取締役会長(右)朝倉由紀子代表取締役社長
「給与や財務、人事評価などのパッケージ製品を開発したが、思うようには売れなかった。また、得られる利益も小さい。東京のパッケージベンダーをみても似た状況だった。北海道であれば、さらに厳しい」と朝倉会長は当時を振り返る。その後、SOCはSIに注力していくことになる。
とはいえ、道内には案件が少ないため、SOCは東京に活路を求めた。東京は競合相手が多いものの、パッケージ開発の経験などが生きて、徐々に売り上げを伸ばしていく。現在でも、東京の案件が売り上げの8割近くを占めるという。
「今後も東京の売り上げを伸ばしていきたいと考えているが、客先常駐型ではなく、請負型を増やしたい。ニアショア開発として、北海道で案件をこなしていく」(朝倉会長)。北海道に根づく企業ゆえ、社員の多くは道内での勤務を望んでいる。また、北海道在住の社員が道外へ出向くには経費がかかり、社員の精神的な負担も大きい。こうしたことから、SI案件を東京で獲得し、北海道で開発することを理想として掲げている。
朝倉会長はまた、IT産業が北海道向きだと考えている。「北海道は輸送コストが高いので、モノづくりには向いていない。安いのは人件費。だから、IT産業は北海道にあっている」。いずれは国内だけでなく、世界から認められるIT集積地にしたいとのことである。
オーソドックスが残る
バブル経済崩壊、その後の不況などを乗り越えてきたSOC。いずれは新規の開発案件が減り、SIerに厳しい時代がくるという論調に対して、「企業には情報システムが必要。システム化の範囲はどんどん広がるため、仕事はなくならない。むしろ、増えていく。重要なのは、顧客ニーズにしっかり応えること。顧客に支持されるSIerは生き残っていく。結局は、オーソドックスなSIerが残ると考えている」と、朝倉会長は今後については心配をしていない。
ただ、営業をせずに下請けに甘んじているSIerに対しては、いずれ厳しくなるとの見方をしている。「創業時はそれでいいかもしれないが、下請けに甘んじていると将来は厳しい。東京では多くのSIerが、エンジニア派遣をビジネスにしている。あれほど多くのエンジニアは、いずれいらなくなるのではないか」。SES(System Engineering Service)も事業の一つとしているSOCが、ニアショア開発に注力するのはそのためだ。
女性が活躍できる現場に
朝倉由紀子・代表取締役社長は、SOCの強みについて次のように語る。「一人ではできないことを、みんなで力を合わせて取り組む。そうした一体感が現場にある。それが社風になっている」。実際、顧客から「SOCはまとまっている」と評価されることが多いという。
人材育成に対する取り組みも特徴的で、例えば「親孝行月間」を設定し、新入社員に親に感謝の意を込めた感想文の提出を求める。「親を尊敬しない人は成長しない」と、朝倉社長は語る。目指すは、人間力の向上だ。また、現場を盛り上げてくれる社員を「ベストクルー賞」として、3か月に1回表彰するという取り組みも行っている。
そうしたなかで朝倉社長が強調するのが、「女性の活躍」だ。同社では、社員のサポートもあり、出産を理由に会社をやめる社員はいないとのこと。「育児休暇から復帰した後の働き方を考慮するなど、女性が長く勤められる職場を目指している。女性には女性のよさがある。現場での指導は女性のほうが上手だと思うし、子育てを経験した女性は時間の使い方が上手」と朝倉社長。自身も育児に奮闘しながら、社長業をこなす。こうした多様性が、同社の業績を支える要因の一つとなっている。