東海地区の有力な独立系SIerであるトーテックアメニティは、近年、首都圏でのビジネスを強化している。よりパイの大きな市場で、成長の基盤を確立しようとしているのだ。課題は、大きく二つ。自社のパッケージ商材を生かし、業種特化のノウハウを生かし、新規の案件を増やすこと。そして、既存ビジネスの中心であるSES(System Engineering Service)も含め、いかにして人材を確保するかだ。(取材・文/佐相彰彦)
Company Data会社名 アイガ
本社所在地 名古屋市中村区名駅南1-17-23 ニッタビル9F
資本金 5000万円
設立 1999年10月7日
社員数 正社員88人(グループ合計は103人)
事業概要 IT業務における客先常駐型派遣サービス/ウェブプロモーションサポートサービス/スポーツチームへのコンディショニングサポートサービス/コミュニケーション研修を中心とした教育サービス
URL:http://www.aiga.jp/ 極端な話、技術はいらない

坂井 徹
代表取締役CEO アイガが事業の柱の一つに据えているIT技術者の常駐派遣ビジネスでは、メインの取引先となるのが製造業だ。ITメーカーやSIerなどとパートナーシップを組んで、ユーザー企業に導入するシステムを開発するわけだが、そこで必要となるのは技術力というのが一般論だ。ところが、坂井徹・代表取締役CEOは「極端な話、技術力はいらない」と断言する。
これは、アイガが社員に対してIT技術に関する高度なスキルを習得するための教育に力を入れているからいえること。技術力があるのは大前提で、しかも技術を取り巻く環境は日々進化している。一昔前の技術力を重宝するベンダーは少ない。
今は、オンプレミスとクラウドという二つのシステム環境があることに加え、アジャイル型の迅速な開発が求められる。パートナー企業やシステムを導入するユーザー企業ときちんと話し合いができて、最適なシステム構築やサービスを提供できる人材が必要になるということだ。技術力だけを身につけたとしても、「優秀な技術者になるとは限らない」というのが坂井CEOの考え方。そのため、アイガでは技術者である社員を「サービスエンジニア」と位置づけている。
実際、現場ではユーザー企業のニーズを満たして、なおかつ最適なシステムを開発することが重要で、「SE(システムエンジニア)は内に閉じこもりがちで話さない印象が一般的にはあるが、これを打破していくために、サービスエンジニアとしてコミュニケーション力の強化に取り組んでいる」との考えを示す。
活気溢れる社内
コミュニケーション力に長けたスタッフを揃えるため、採用についても「きちんと会話できる人材をポイントにしている」という。サービスエンジニアとして配属される社員は、新入社員研修で、まず社会人としてのマナーを勉強。営業担当者と同様の研修を受けることになる。それから技術者としてのスキルを磨く。「あたりまえのようで、実はIT業界だと社会人としての基礎をおろそかにするケースがなかにはある。それは、決していいことではない」と坂井CEOは訴えている。
取引先やユーザー企業とスムーズなコミュニケーションを図るためには、ふだんから習慣づけておかなかればならない。そのため、社内は会話で活気に溢れている。もちろん、無駄話をしているわけではなく「新しいアイデアを思いつくための企画立案や問題解決につながるブレストは欠かせない」としている。
ただ、コミュニケーション力があるからといって、まったく技術に関して学ばなかった学生が優秀なエンジニアになるのは、時間がかかる可能性がある。そのため、インターン制度を設けているほか、ときには坂井CEO自身が大学や専門学校で講演するなどで、いい人材を確保することにも取り組んでいる。
複数事業の連携で効果を発揮
アイガが客先常駐型のITサービスに着手したのは2005年9月。1年後の06年に坂井CEO体制となった。
以降、ウェブ活用によるプロモーションをサポートする「アクティブサポート事業」、アスリートを支援する「チームサポート事業」などを手がけるようになった。アイガがサービスエンジニアを育成できるのは、ITサービス以外の事業も手がけているため。経営者層から中堅社員や新入社員、管理部門までを対象とした「教育事業」を展開していることも大きい。「複数事業の連携で効果を発揮している」と坂井CEOは説明する。
IT業界について、坂井CEOは「IT業界の潮目が変わっている」と捉えている。だからこそ、サービスエンジニアという肩書きで、社員を育成しているといえよう。
「客先常駐型のエンジニアがパートナー企業やユーザー企業に付加価値を与える環境をつくる」。他社と一線を画したビジネスモデルで、アイガの売り上げは、13年度(14年9月期)に3億2000万円、14年度に5億2000万円、15年度に6億5000万円の見込みと、右肩上がりで推移している。